コンサルタントの秘密―技術アドバイスの人間学 ジェラルド・M・ワインバーグ (著) #67
admin 1956年頃からIBMにて13年間勤務した後、コンサルティングと教育に携わり、著書・共著は合わせて30冊以上を誇り、数百もの記事を寄稿している、コンピューター業界で広く知られているコンサルタントである著者、ジェラルド・ワインバーグ(ジェリー・ワインバーグ)が、自身の発見について述べたのが本書。
第1章 コンサルタント業はなぜ大変か
第2章 逆説的思考育成法
第3章 わからないことをしているときでも有効であるの法
第4章 そこにあるものを見るの法
第5章 そこにないものを見るの法
第6章 わなから逃れるの法
第7章 インパクトをふくらますの法
第8章 変化を飼い慣らすの法
第9章 変化を安全に起こすの法
第10章 抵抗に出会ったら
第11章 サービスの売り出しかた
第12章 自分に値段をつけるの法
第13章 信頼を勝ち得るの法
第14章 アドバイスを人に聞いてもらうの法
参考書およびその他の経験―もっと知りたい人のためのガイド
著者のジェリー・ワインバーグは、言う。
『コンサルタントの仕事とは、私の定義によれば「人々に、彼らの要請に基づいて影響を及ぼす術」というものである。人々はある種の変化を望む、またはある種の変化を恐れてコンサルタントの何らかの形の手助けを求めるのである。』
たとえば、僕(竹内正浩)は、一応、経営コンサルタントと名乗っているが、ワインバーグの定義に照らしてみると、こうなる。
「専門家(プロフェッショナル)、高度な知識を必要とする知識型ビジネスの経営者[人々]に、業績アップや顧客獲得の要請[彼らの要請]に基づいて、それらを達成する影響を及ぼす」
別に、経営コンサルタントだけがコンサルタントなわけではない。ワインバーグは、こうも言う。
『もし読者が隣人に、芝生のヒメシバをとるには何を使っていますかと聞いたとすれば、読者はコンサルタントを使っていることになるのだ』
つまり、人の日常は、コンサルタントに満ちていて、時には、自分自身が誰かのコンサルタントとなっているというわけだ。
では、この本は、どのような本なのか?
『この本は、影響してくれという要請をめぐる、一見非合理的な行動にひそむ合理性に関しての、私の発見を述べたものである。それがコンサルタントの秘密である。この表題から見て、この本はコンサルタントのための本だという感じを持たれる向きもあるかもしれないが、実はこの本はわれわれのこの非合理的な世界の中で混乱し、それについて何かをしたいと思っているすべての人々のための本なのである。』
と、婉曲的な言い回しで、わかりづらいかもしれないが、要するに、本書の読者層は、かぎりない、というわけだ。
たしかに、本書は、このような言い回しが多く、読みづらい感があることは事実である。
しかし、それをおぎなって余りあるほどの価値ある書籍なのだ。
特に印象的だった部分をあげると、「ルウディーのルタバガ法則」がある。
正直に言って、ストーリー部分が多く(自分(竹内正浩)の本も多いくせに、とお思いでしょうが・・・すみません)、非常にウィットやユーモアに富んだ内容なのであるが、ここでそれを書いていると、余計な文章になってしまうので、避けておいて、要約してみる(ただ、そこが良さでもあるので、ぜひ購入されて、読んでいただくことをおススメします)。
著者のジェリー・ワインバーグが13歳のとき、スーパーマーケットの臨時在庫係になった。
ジェリーが仕事に慣れていくと、あるパターンに気付いた。
それは、ルタバガ(カブランカン)が、ずっと飾り物となっており、いまだかつて買った人がいない、ということだった。
小売業にとって、売場スペースは、貴重な資源であり、重要だ。
そんなある日の朝、食品売場のマネージャーのルウディーと売場で、野菜を限られたスペースに、どうやって配置しようかと考えていた。
ジェリーは言った。
「気がついたんですけど、ルタバガはあんまり売れてないみたいですよ。それどころか、うちじゃ一番売れない野菜みたいなんです。もしルタバガには全然スペースを使わないことにして、それをほかのものに使ったらうんと損になるでしょうか。」
ルウディーは、バナナの空き箱に、ルタバガをぶちこみながら、言った。
「そりゃいい考えだぜ、坊や。」
ルタバガがなくなったスペースを眺めて、彼はこう言った。
「さて坊や、そいつはいい考えだったよ。で、一番人気のない野菜は、今度は何だね。」
「ルウディーのルタバガ法則」
第一番の問題を取り除くと、第二番が昇進する
この後のジェリーの文章は、とても刺激的だ。
コンサルタントとして私は、ときにあまりに深く依頼主の問題に首を突っ込みすぎて、それらを本当にきれいさっぱり片づけられると信じそうになることがある。だがルウディーの法則によれば、つねにもう一つ問題が残っているのだ。
問題が山積していて、多忙な日々を送っている人は、おそらくこう思ったことがあるだろう。
「問題が、まったくなくなって、すべて解決してくれればいいのに」
しかし、現実は厳しいもので、ルウディーのルタバガ法則によれば、問題がすべて解決することはないということになるのだ。
つまり、ある問題が解決すると、次の問題が昇進して、第一番目の問題と化すからである。
これは、非常に衝撃的な事実を示唆している。
つまり、人生において、人は、問題から解放されることはない、ということである。
常に、何らかの問題を抱えながら、人は生きていかなければならないというわけだ。
しかし、逆に、この法則を知っておくと、有意義なことがある。
それは、「問題から解放されることはない」と認識して、対処することができるからだ。
別の表現でいえば、問題から逃げるのではなく、問題に立ち向かうことができるということだ。
たとえば、ある問題に直面しているとする。
法則を知らない人は、こう思う。
「この問題を解決すれば、すべてきれいさっぱり、解放されて、スッキリすることができる」
しかし、法則を知っていれば、「この問題を解決しても、また、別の問題が来るものだ。特に淡い期待をせず、問題に対処し、問題解決のプロセスを充実してすごしつつ、今後の問題に対しても、きちんとした姿勢であたるようにしよう」という(あくまで例であるが)とらえかたができる。
端的に、この法則の効果を言えば、現実への適切な対処、心がまえ、心の準備ができるということだろう。
淡い期待と落胆の繰り返しを防ぎ、感情のブレが起こらずにすむ、心穏やかに問題に対処できる。
このような効果が得られよう。
たしかに、本書を読んだからといって、「即座に成功!」というものではないかもしれない。
しかし、人生の予備知識として、非常に有益な書籍であることは間違いないだろう。
67冊目
Posted in 名著, 哲学系 |
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