小説・秒速5センチメートル 新海誠 (著)
admin 小説のよさは、たぶん日常の価値を再認識させてくれるという点にあるのだろう。
何気ない毎日、僕が日頃読んでいる経営書やビジネス書の読者は、(そもそも本を読む人間は希少なので)ほとんどが優秀で、忙しく働いていて、それで収入も高い。
けれど、仕事ばかりの生活のために、日常を感じる時間がないことも意味している。
日常は、ただそこにある時間で、ともすれば見過ごしてしまう。
平凡で退屈なはずの日常は、合理性から見れば、軽視されてしかるべきかもしれない。
なぜなら、その合理性こそが、ビジネスにおいては重要なパラダイムなのだから。
つまり、優秀なビジネスマンは、その優秀さゆえに、合理性というパラダイムから逃れられずにいるのだ。
だから、日常を価値あるものとして、捉えることが難しい。
結局、ぼんやりと、なんとなく流れていってしまうのだ。
小説は、疑似体験ではあるけれども、その意味をもう一度気づかせてくれるものだと、僕は思う。
何気ないしぐさ。
何気ない風景。
あのとき感じた気持ち。
そのすべては、合理性から見れば、たいした価値のないことなのかもしれない。
だけど、きっとそれらは、本当は自分にとって、とても価値のあることで、振り返ってみれば、よかったと思えるようなものなんだ。
小説は、きっと、人の人生はどんなに平凡だったとしても、それが本当は素晴らしい風景に彩られたものなのだと気づかせてくれるものなんだろう。
そんな気持ちになった一冊。
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