一倉定の経営心得 一倉 定 (著) #62
admin 事業経営の成否は、社長次第で決まるという信念から、社長だけを対象に大中小5000余社を情熱的に指導した異色の経営コンサルタントである著者、一倉定氏が、「社長は何をなすべきか」を明示した一倉社長学の要諦104項と著者の解説を併せて書いたものが本書。
書き方的には、神田昌典氏の「仕事のヒント」と類似(というか、こちらが先だと思うが)。
─事業活動の本質(14項目)─
─最高責任者としてのあり方(25項目)─
─事業と販売(17項目)─
─経営の数字(17項目)─
─未来事業(15項目)─
─組織と人(16項目)─
全体的に言えば、一倉定氏のエッセンスをまとめたもの、といったところだろう。
個人的に印象的だったのは、「会社の支配者」、「理想的な経営構造」、「景気下降期の対策」の三点だ。
会社の真の支配者は、お客様である。
会社というものは、その会社の商品がお客様に売れて、はじめて経営が成り立つという、何とも当たり前のことを、私は絶えず叫び続けている。というのは、お客様を無視し、無視しないまでも第二義的にしか考えない、という会社が世の中に多すぎるからである。
この文章が書かれたのは、実際上はかなり昔のことだろう。
しかし、一向に色褪せていない。
時代が変わっても、世の中は変わっていないのだと気付かされる。と同時に、一倉定氏の主張する、「会社の真の支配者は、お客様である」という言葉をきちんと受け止めて行動しなければならないのだと感じた。
理想的な経営構造
理想的な経営構造は、「工場を持たないメーカー」である。
(中略)
設備は止むを得ないもののほかは一切もたずに、自らは強い営業力と優れた事業開発力をかねそなえた「頭脳集団による経営」こそ賢明である。
この記述には、本当に驚かされた。
先ほども述べたように、この文章が書かれたのは、かなり昔。
にもかかわらず、このような主張をしていたとは、一倉定氏が慧眼を持っていたということを表していよう。
現在では、「ファブレス企業」などと言って、自社工場を持たず、営業力、事業開発力だけでビジネスをしている企業が出てきている。たとえば、コンピュータのデルやスポーツ用品のナイキなどがそうだ。
これらのコンセプトをかなりの昔から提唱していたことに驚かされた。
景気下降期の対策
景気下降期に入った時、まず手をうたなければならないのは、資金対策である。売上が下がってゆくのに、売上の多い時に振り出した手形を落としてゆかなければならないからである。
まず、売掛金の回収をいそぐ。資財は当用買だ。不急の支出は一切止める。新規設備投資は無論のこと、現在進行中の設備投資でも、中止できるものは中止し、中止できないまでも延期するか、ピッチを落とす。
場合によっては、新入社員や欠員補充の削減、中止、延期が必要かも知れないのだ。その上さらに、いち早く銀行にかけ合って、借金またはその約束をとりつけるのである。
最後は、景気下降期の対策についてだ。
アメリカの住宅バブルを端に発した景気後退の局面が訪れようとしている現在、このアドバイスは、非常に有益だろう。
たしかに、現金商売だったり、設備投資があまり必要でない産業であれば、乗り切れやすいだろうが、それなりに設備投資があったり、キャッシュフローがあまり潤沢でない産業であれば、重要なアドバイスといえる。
時代を経ても、なお劣化していない著者の主張。
それは、基本であり、原理原則であるからこそ、なのだろう。
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