本ブログもようやく100冊目になった。
100冊目は、それにふさわしいような名著である。

本書のタイトルには「ミラクル・ストーリー」とある。
これは「ホットペッパー」が4年で全国42版展開、売上約300億円、営業利益約100億円の事業となり、近年では500億円規模となったことを指しているのだろう。
ぼくにとっては、売上約300億円・営業利益約100億円の高収益モンスタービジネスについての、この種の企業秘密的な戦略情報、ビジネスシステムについて率直に書かれた本を、たった1,575円で手に入れることができることが「ミラクル」だと思う。
このモンスタービジネスは、何によって生み出されたのか。
ぼくが見るところ、それは「研ぎ澄まされたシナリオ・ビジョン・ルート」と「高度なパターン化・システム化」、「高い組織運営能力」によって生み出されたのだろう。
大きな、そして、鋭く研ぎ澄まされたシナリオは、迅速な拡張をもたらすように設計されており、高度なパターン化・システム化によって、労働力の迅速な戦力化を促し、高い組織運営能力がそれらを束ねる、という構図である。
まず、「研ぎ澄まされたシナリオ・ビジョン・ルート」について見ていこう。
『「まずは飲食コンテンツに集中する。
半径2キロのコア商圏でNTTデータの飲食件数のうち15%を獲得すれば、読者のマインドシェアを獲得できて、流通段階でみんなが自ら喜んで手にとって持ち帰るインフラができる。
その流通インフラが確立できれば、一気に効果のある媒体になれる。
その後に美容室、キレイ、スクール、リラクゼーション、ショッピングなどのコンテンツに展開を拡大する。
そして、街の生活情報誌になる。そのために、半径2キロにある街の飲食コア商圏内の飲食店へ、特に居酒屋へ営業に行く。
1/9スペースを3回連続で受注する。
1人1日20件の訪問を実行する」
これが『ホットペッパー』の勝つシナリオだった。』
「ホットペッパー」の勝つシナリオ、それは「研ぎ澄まされたシナリオ」であると同時に、容易にイメージしやすい、「これからどのようにすればいいのか?」という関係者全員の疑問に答えることのできる、シナリオである。
そして、「ホットペッパー」という高収益モンスタービジネスの根本であり、事業モデルであり、事業戦略であり、成功の秘密のひとつである。
つまり、「ホットペッパー」という高収益モンスタービジネスの基本レシピこそが、このシナリオなのである。
このシナリオは実に驚嘆に値する。
地域密着によるエリア支配、コア商圏におけるシェアの拡大、流通インフラの確立、拡張性の方向性とエレガントなまでに美しい。
ぼくは、この『「ホットペッパー」の勝つシナリオ』を見たとき、思った。
「ぼくも、こんなエレガントなシナリオを描いてみたいものだ」
もちろん、シナリオが美しいだけでは不十分である。それは、そのシナリオを実現するために行動しなければならないからだ。
その行動段階に組み込まれた仕組みが「高度なパターン化・システム化」である。
「ホットペッパー」は、組織構成として1,500名によって構成されているそうだが、その85%は非正社員だという。
また、創刊当初から、業務委託と契約社員(3年の契約社員)とアルバイトによって創られたという。
非正社員がほとんどの組織で、十分なトレーニングに基づくスキルを要する仕事をこなす、ということは非常に難しい。
にもかかわらず、そのような組織であった「ホットペッパー」がなぜ、ハイスピードの拡大を達成できたのか。
その答えのひとつが
「高度なパターン化・システム化」だ。
『後の営業戦略の中核となる「コア商圏・飲食・居酒屋・1/9・3回連続受注・20件訪問・インデックス営業」というコンセプトが生まれ、それを「念仏」と呼んだ。
「人通りが多く飲食店が集積する中心地を営業活動のコア商圏として設定し、飲食店のなかでも居酒屋にフォーカスして訪問する。情報量を確保できる1/9スペースを3ヵ月連続=3回連続セットで受注する。そのために一日20件を必ず営業訪問する」
一人ひとりがその念仏を唱え、自分の行動がその行動基準から外れていないかを毎日のなかで確認できる、それが「念仏」だった。
成功のコンセプトを日々の具体的な行動に落とし込むことが、もっとも大切なことだ。』
まずは、行動プロセスのパターン化・システム化である。
この「念仏」もまた、シナリオと同様に美しい。
非正社員であれ、この「念仏」を唱えているだけで、自分の行動がシステムに沿っているのか、そうでないのかを判断できるからだ。
「念仏」そのものも、非常にシンプルに営業戦略がまとめられており、非正社員が迅速に戦力化され、ハイスピードの拡大を達成できた背景が見える。
この「高度なパターン化・システム化」は、営業戦略のみならず、よりミクロの営業現場での対処でさえ、徹底されている。
『実はニーズは多様化していない。
『ホットペッパー』でも当初、顧客ニーズが多様化しているのに、それを型にはめるのは危険だという反対意見が出た。
型にはめることは個人の個性や成長を阻害するという反対意見も出た。
しかし、顧客ニーズを整理して絞り込むと、
団体をとりたい
回転率をあげたい
客層を変えたい
顧客単価をあげたい
せいぜいそんなものだった。
それら各々の課題を解決できた原稿パターンやクーポン内容パターン、それらの課題を解決できる商品設計や流通設計やプロモーション計画をまとめたツールパターンを用意した。
そのツールパターンを使った5分間の営業トークの完全シナリオをつくり、それを新規営業の「型」として完全に暗記して繰り返し、繰り返し徹底的に訓練した』
最初に顧客ニーズの分析によって、ニーズが多様化しておらず、実際には、『団体をとりたい・回転率をあげたい・客層を変えたい・顧客単価をあげたい』というニーズくらいであることを明らかにした。
次に、それぞれの課題に対応するアプローチをパターン化し、ツールパターンを用意。それらを「型」としてトレーニングする。
このような仕組みがあるからこそ、非正社員をインスタントに戦力化することが可能になるのである。
思わずうなってしまう。
最後の「組織運営」については、今のところ興味があまりないので、本書を読んでいただくとして、『フラット、業績把握、モチベーションを高める仕組み、評価システム』とスキのないつくりとなっている。
ぼくは本書を読み終えたとき、思った。
「ホットペッパー」が4年で売上約300億円、営業利益約100億円の事業となり、近年では500億円規模となったことは決して「ミラクル」ではないのだ、と。
思わず、美しいと言ってしまうほどの「研ぎ澄まされたシナリオ・ビジョン・ルート」と「高度なパターン化・システム化」、「高い組織運営能力」があるからこそ、そうなったのだ。
つまり、合理的に築き上げられたものであり、「なるべくしてなった」のだ。
ぼくは、別にこの読書感想文を書くことにお金をもらってはいない。
だが、ビジネスに関わる人であれば、本書に1,575円分以上の価値を見出すことは間違いないと思っている。
だからこそ、ぼくは1,575円の本書を押し売りしよう。
Hot Pepperミラクル・ストーリー – リクルート式「楽しい事業」のつくり方」 平尾 勇司 (著) #100 You can buy this book on amazon.