「ふつうの億万長者」徹底リサーチが明かす お金が“いやでも貯まる”5つの「生活」習慣 トマス J スタンリー (著), 本田 健 (翻訳) #123

12月 23rd, 2009 by blogown


本書のメッセージは、「本物の資産家になるには、質素倹約であれ」。
本書は、蓄財と消費の関係性についての考察がメインである。

浪費を繰り返す人たちは、次のような人だという。

ファッション界や小売業界で言うところの「上昇志向の人」、つまり、金持ちのように見えるけれども、金持ちになりたいと願っているだけの、金持ちではない人

そして、金持ちが金持ちになれる理由。

金持ちが金持ちになったのは、ぜいたくをしたいからではない。そして、金持ちが金持ちになれたのは、ぜいたくをしなかったからだ。

また、極めて興味深い話が、浪費と育った環境についての関係について述べられている部分。

高くないスーツを着ている人は、おそらくミドルクラスの生まれですね。両親は決して金持ちではないけれど、いわば安心して暮らせる収入があったのでしょう。両親の社会的地位や持ち物について、恥ずかしく思うことなく育った人です。

ぜいたくなヘアスタイル、2000万ドルの家、引き出しいっぱいの高級時計、複数のフェラーリ、オーダーメイドの服、2000本のビンテージワイン。これらは成功のシンボルの域を超えている。非常に裕福な人のなかで、ミスターMのような消費パターンをとるタイプの人には、共通する経歴がある。たいていは、経済基盤がほぼゼロに等しい家庭で育っているのだ。ミスターMの父親は、工場の非熟練労働者で年間所得は2万5000ドル以下だった。また、両親とも大学を出ていない。

「浪費する億万長者」には、貧しい境遇から叩き上げてきたケースが多い。

全体として、興味深い話が多いのだが、本書を通読する上で、把握しておかなければならないことがある。

それは、本書における「億万長者」の定義である。

本書では、100万ドル以上の資産を持つ人のことを億万長者と呼ぶ。

つまり、これはストックが大きい(純資産が大きい)人を定義づけしているということになる。
その定義からして、全体的にディフェンシブ(守りが堅い)、堅実、質素・倹約である人が多いこととなり、所得レベルはそれほど大きなファクターではなくなる。

そのため、所得を大きくすること、たとえば、年収XX万円や年収1億円といった方向性とは異なることは把握しておくべきことではある。
要は、稼ぎを多くするのではなく、本当の豊かさを考えましょう、というメッセージであるわけだ。

そのため、キャッシュフローの大きな人、所得の高い人は、本書のメッセージをそのまま、額面どおりに受け取りすぎてもいけないと思う。

たとえば、ディナーに高い金は払わない、というメッセージがあるが、重要な会合がディナーというかたちでセッティングされた場合、ビジネス上、そのディナー代は負担しなければならないこともあるだろうし、また、同様なケースは多々あるだろう。たしかに、当人の消費傾向とは異なっているとしても、だ。

つまり、どこまでこれらの考えを貫けるかどうかという点には、職業的な制約もあれば、置かれた立場、環境といった要因に左右されるということは意識しておくべきだろう。

本書で、最も賞賛されているケースは、端的に言えば、ブルーカラー、もしくは、ブルーカラーに準じるビジネスの経営者で、質素倹約をしていて、資産家である、というケースである。

そのケースからの逸脱度合によって、そうともいえない点があるのだ。

以上のように述べていくと、本書を批判しているように感じられるだろう。
しかし、僕は本書は賞賛されるべき良書だと思う。

それは、本書のメッセージの本質が価値あるものだと思うからだ。
その本書のメッセージの本質は、次のようなことにあると思う。

若者たちは、金を使うことがアメリカらしいやり方だと絶えず教え込まれます。若者のお手本になりやすいのは、巨額の報酬を受け取るプロスポーツ選手や芸能人です。来る日も来る日もマスコミは、あのスポーツ選手が購入した数百万ドルの大邸宅、この映画スターが所有するヨーロッパ車の一群といったストーリーを量産し続けています。そうした影響力のあるロールモデルたちを大々的に扱って賛美することで、マスコミは「車や家やパーティーに好きなだけ金を使えば、幸福になれる」というメッセージを送っています。しかし実際には、金を使うことは人を幸せにはしません。

つまり、「消費は素晴らしい」、「消費こそ最上の幸せである」という現代のドグマに対するアンチテーゼである。
たしかに、周囲を見回してみると、また、メインストリートで見渡してみると、あたりにあるメッセージは「金を使え!!!」「ここで金を落として!!!」というものしかない。

あらゆるマスコミやメディアは、消費を促し、雑誌の広告は素晴らしい写真で、そのブランドの素晴らしさを表現する。
テレビCMでは、流麗なボディをしたスポーツカーが消費をそそる。

しかし、立ち止まって考えてみよう。
本当に、それが幸せにつながるのだろうか

高い収入を稼ぎ、色々なモノに大金を払う。
そうすれば、ぼくらは本当に幸せになれるのだろうか。

そう考えさせる一冊である。

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貧困の終焉 ジェフリー サックス (著) + 世界を変えるお金の使い方 山本 良一 (著), Think the Earth Project (著) #103,104

8月 15th, 2009 by blogown

はるか遠くの地では、構造的な苦難に直面し、飢えと病気に苦しみ、汚染された飲料水を飲み、極貧のうちに生涯を終える人々が存在している。

経済発展をハシゴにたとえ、その段を上がることが経済的な幸福につながると考えるなら、世界中でおよそ十億人(全人類の6分の1)が現在、開発のハシゴの一番下の段にさえ、足のかからない人々が存在しているのだ。

本書は、私たちが生きているあいだに世界の貧困をなくすことについて書かれた本だ。

この世界がすべて正しい方向に進んでいるとはかぎらない。
アメリカ政府は4500億ドルを軍事費に回す一方で、世界の貧困対策には150億ドルしか投入していない。

世界の貧困を救うよりも、戦争に対して30倍ものお金を使っているというのが現実なのだ。

たとえば、ケニアのサウリでは、人々は飢えとエイズとマラリアに苦しんでいる。
成人のエイズ罹患率はおよそ30%。ほぼ全家庭が、エイズのせいで親を亡くした子供を引き取っている。しかし、その一方で、エイズ治療である抗レトロウイルス治療は、誰も受けていない。

4分の3の家庭には、マラリア患者がいる。しかし、すべての家庭がひとつ数ドルのマラリア予防の蚊帳を知っていて、使いたいと望んでいるにもかかわらず、実際に使っているのは200人中2人だけ。高すぎて、買うことができないのだ。

病気にかかってしまったとしても、事態は好ましいとはいえない。なぜなら、医師がいないからだ。それは、医師への給料が支払えず、薬も買えないためだ。

児童のほとんどは、授業料、制服代、備品などのお金がないことから、中学に進学できない。そして、ほとんどの児童は、授業のあいだ、空腹ですごすことが多い。

現状の問題を端的に述べよう。

この村や似たような世界中の貧しい村は、救うことができ、開発への道を歩むことができる。

しかし、自力ではできない。なぜなら、彼ら自身が自分たちでそのコストをまかなうには大きすぎる金額だからだ。

ただ、彼らにとっては大きすぎる金額でも、世界にとってはわずかな金額にすぎないのである。

では、このような飢えと病気と死によって彩られた極貧の社会を健康で経済開発の可能な社会へと変えるためにどのようにすればいいのだろうか。それには大きく5つの項目がある。

1.農業への投資
肥料、改良休閑地、緑肥、雨水貯留などの導入で、1ヘクタールあたりの食料収穫量を3倍に増やすことができ、長期的な飢餓の解消につながる。

2.基本的な健康への投資
住民5000人につき、医師と看護師1人ずつのいる診療所をつくり、マラリア予防の蚊帳を無料で配給する。基本的な各種医療サービスの提供。

3.教育への投資
児童の健康状態改善と教育成果、出席率向上のため、小学校の全児童への給食を受けられること。職業訓練の充実によって、近代農法、コンピュータなど、自立に必要な知識を学ぶことができる。

4.電力、輸送、コミュニケーション・サービス
電力によって、安全な水をくみ上げるポンプ、製粉、加工、電灯などが利用できる。加えて、移動手段の充実と外界とのコミュニケーションが可能になることで、社会的な孤立を防ぐことができる。

5.安全な飲料水と衛生設備
汚染された水を飲まずにすみ、女性や子供たちが毎日何時間もかけて水汲みしなくてすむようになる。

たとえば、ケニアのサウリ住民5000人に対して、これらのサービスにかかるコストは、トータルで年間35万ドル。サウリ住民1人あたりにすれば年間70ドル。

これらの項目に対して、世界にとってはわずかなコストを支払うことで、極貧住民たちの自立支援を行うことができるのである。

豊かな社会に生きているために気づかないでいるだけで、はるか遠くの地では極度の貧困にあえぐ人々がいる。

彼らは自分たちの声を伝えていくことができないために、多くの人は彼らの存在を意識することもなく日々をすごしている。

しかし、彼らの存在に気づき、少しでも何かできたとすれば、少しではあるが、よりよい社会になっていくのではないだろうか。

それでは、よりよい社会のために、私たちが何ができるのか、を考えてみよう。

参考になる書籍として、「世界を変えるお金の使い方」がある。

本書は、「お金をどのように使うべきか」について論じた本であり、社会貢献できるお金の使い方について書かれた本である。

世界をよりよい場所にするために、豊かな社会に住む私たちが少しばかりのお金でできることについて、わかりやすく伝えてくれている。

前述のジェフリー・サックスの書いた書籍の流れから、極度の貧困に関係するお金の使い方について、少し書き出してみる。

100円で・予防可能な感染症の中で死亡率が高く、手足に重い後遺症を残すポリオからミャンマーの子ども5人を守ることができます。

500円で・西半球の最貧国、ハイチ共和国の診療所で、不足しているお医者さんをひとり雇うことができます。

1兆2,000億円で・教育の機会を与えられていない世界中の子供たち全員が初等教育を受けられます。

最後の項目は、非常に大きな金額のように感じる。しかし、本書の下部には、こう書かれている。

「1兆2,000億円・世界全体の軍事費、4日分」
2003年の世界での軍事費は合計9,560億ドル
1日あたり26億2,000万ドル。

1週間分の軍事費を教育費に回せば1億人を超える子供たちが十分な基礎教育を受けられることになる。

誰かが言った。

「少年は年をとり、大人になるにつれて、社会の理不尽さについて学ぶ」

たとえ、大人になって、社会の理不尽さを学んだとしても、それに抗うことをやめてはならない。

自分だけの未来ではなく、社会全体の未来を。
世界をよりよい場所とするために。

本書には、具体的にどのようにアクション、行動すればいいのかが案内されているので、本書を参考に、具体的な行動をされてみてはいかがだろうか。

追記:
なぜ、このような格差が生じたのか。
なぜ、経済発展に差が生じたのか、というテーマについて深く知りたいと考えたとき、この問題の背景を知りたいと考えたときに参考になる本としては、「銃・病原菌・鉄(上下)」ジャレド ダイアモンド (著)(草思社刊)がある。
銃・病原菌・鉄〈上巻〉 ジャレド ダイアモンド (著)
銃・病原菌・鉄〈下巻〉 ジャレド ダイアモンド (著)

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結婚戦略―家族と階級の再生産 ピエール・ブルデュー (著) #90

4月 28th, 2009 by blogown

著書『ディスタンクシオン』で有名なフランスの社会学者である著者、ピエール・ブルデューが、1950年代に独身者数の増大に悩む生まれ故郷ベアルン(フランス農村)での、結婚市場をめぐる調査から、婚姻交換システムの変容とそれがもたらした結果について述べたのが本書。

もちろん、僕は戦前生まれではないので、だいぶ昔の結婚事情については知らない。しかし、漠然としてではあるが、日本史の勉強を通して、また、世間での常識を通して、認識してはいる。

それは、家同士のつながりで、長男が家督相続して、お見合いがほとんどであった、というような具合である。本書の著者(そして、僕が敬愛する)ピエール・ブルデューは、冒頭部において、そのことについて、端的に説明してくれている。

1914年以前には、婚姻は非常に厳格な規則により規制されていた。婚姻が家族的農業経営の将来全体を左右していたために、また婚姻が非常に重大な経済的交渉の機会でもあったために、さらにそれが社会的なヒエラルキーや、このヒエラルキーにおける家族の地位を再確認させることになったために、婚姻とは、個人というよりも集団の関心事なのであった。結婚するのは家族であったし、人は家族と結婚したのである。

婚姻は、家産の一体性を損なうことなく家系の継続性を保証することを第一次的機能としている。

結婚はかつて、一個人の問題ではなく、家族、ひいては一族という社会集団における問題であったことがわかる。

現代では、それらの価値観が比較的薄くはなってきているのでわかりづらいが、かつては、このようなかたちで、集団を中心とした結婚が行われていたというわけなのである。

また、ブルデューは、現代の自由恋愛結婚市場について、かなり以前から深い見識を持っていたということがわかる。

親の権威の弛緩と若者の新しい価値観への接触によって、家族は結婚の成立における積極的な仲介者としての役割を奪われた。それと同時に「仲人好きの人」の介入はあまり見られなくなった。

その結果、結婚相手探しは個人のイニシアチブに委ねられることになった。旧来のシステムでは「口説くこと」をせずに済ますことができたし、口説く技巧をまったく知らずにいることもできた。しかし今やすべてが変わってしまったのである。

婚姻交換システムに、個人間競争の論理によって支配されるシステムが取って代わった。

「個人間競争の論理によって支配されるシステム」それこそが、現在の「自由恋愛結婚市場」のことなのである。

これまでの家族・一族という集団主体のシステムでは、お見合いが頻繁に行われ、良縁を提供してきた。そのため、ブルデューが述べるように『「口説くこと」をせずに済ますことができたし、口説く技巧をまったく知らずにいることもできた』わけだ。

しかし、時代が変わり、「個人間競争の論理によって支配されるシステム」が現状を支配するようになり、個々人はお互いに競争をしながら、結婚相手探しをしなければならなくなったのである。しかも、集団の支援なく、個人のイニシアチブによって、である。

この個人のイニシアチブによって、結婚相手探しを行うという競争原理が支配する、自由恋愛結婚市場が、どのような事態をもたらすのだろうか。それは、現在の日本を見ればわかるのであるが、ブルデューはインタビューによって、それらの問題について表現している。

この男が「押しの強い人」でないならば、どうやって機会を捕まえればいいのか。

女性との接触がないってことは、最も大胆な者に対してさえコンプレックスを与えてるものなんだよ。その人が、性格的に少し臆病な場合には、ことは一層深刻だな。

娘との絶えざる接触によって臆病さは克服されるだろうけど、しかしこうした接触がないような場合にはいっそう深刻になるってもんさ。自尊心の形をとった、嘲笑されるんじゃないかってことへの危惧にがんじがらめにされることもありうるだろうね。

臆病さは、時として誤った自尊心でもあってね、片田舎から出てきたという事実、こうしたすべてのことが、娘と有望な青年との間に溝をつくるんだよ

集団の支援なく、個人のイニシアチブによって結婚相手を探すということは、機会を手に入れることが個々人によって、差が生じることを意味している。

つまり、「押しの強い人」であれば、機会をとらえやすい反面、臆病な人であれば、機会をほとんどとらえることができなくなってしまうというわけなのである。

インタビューでは、有望な青年が、片田舎から出てきたという事実、コンプレックスでさえ、機会を失わせてしまうということについて述べている。

加えて、ここで興味深いことは、二極化の原理を示唆した表現があるところである。いわく、『女性との接触がないってことは、最も大胆な者に対してさえコンプレックスを与えてるものなんだよ。その人が、性格的に少し臆病な場合には、ことは一層深刻だな。娘との絶えざる接触によって臆病さは克服されるだろうけど、しかしこうした接触がないような場合にはいっそう深刻になるってもんさ』。

つまり、そもそも機会がない人の場合、慣れというメリットを得ることが難しい。

男性と女性との間でいえば、男性は『娘との絶えざる接触によって臆病さは克服されるだろう』けれども、そうした接触の機会がなければ、慣れることがなく、状況はより悪化してしまう。

その反面、機会をふんだんに得ている人は、その逆のパターン、つまり、正のフィードバックループが生じる。そもそも機会がある人は、慣れやすい。それが多少、臆病な者であっても、慣れてしまうことで、克服することができる。そうなると、ますます機会をとらえやすくなるのである。

要するに、機会の多い者は、より機会が多くなり、より機会をとらえやすくなるのである。その反面、機会のない者は、そもそも機会がなく、少ない機会をとらえることができず、機会をとらえる能力も向上しづらく、機会の多い者の能力には明らかな見劣りがしてしまうことになるのである。

個人のイニシアチブによって、結婚相手探しを行うという競争原理が支配する、自由恋愛結婚市場。それは、経済における自由市場原理と同種といえる。

経済においても、富める者と貧しい者が存在しているように、自由恋愛結婚においても、機会の富める者と貧しい者が存在する。

それは、自由市場における二極化という現象。
さて、このような状況下で、僕らはどうやって生きるべきだろうか。

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住宅市場の社会経済学 ピエール・ブルデュー(著) #89

4月 27th, 2009 by blogown

著書『ディスタンクシオン』で有名なフランスの社会学者である著者、ピエール・ブルデューが、生活の基盤であり、最も高価で象徴的な買い物でもある「家」の信頼と価値は何に由来し、買い手はいかに購入を決定するのか、住宅市場の現場に働く重層的なメカニズムを徹底分析、人間社会における経済行為の原理を解明したのが本書。

物事を説明する上で、難しいことのひとつは、「あいまいではあるが、よく知られている事実に対して、明快かつ論理的に説明する」ということだ。

よく「そんなことは知っている」という発言を聞くが、では、実際に明快な論理性を持って、事物を説明できるかというと、なかなか難しいものだ。つまり、それを「知っている」「よく知られている」としても、実際にその事象がどのようなものなのかを説明することはできない、というわけである。

それは、事象の言語化が難しいということが要因に挙げられるが、本書の著者、ピエール・ブルデューは、この点、事象の言語化が極めて卓越していることが示されている。

住居に関する経済的選択-購入か賃貸か、購入するとしたら中古か新築か、新築の場合、伝統的タイプの家か工業生産化された家かなど-は、一方では行為者の嗜好など(社会的に構築された)経済的性向と行為者が投入できる財力に依存し、他方では住宅の供給状態に依存する。

つまり、行為者(要は、一般市民である)が住居に関する選択をする上では、行為者自身の嗜好、投入できる財力、住宅の供給状態によって左右されてしまうという事実を述べている。

この文章に書かれていることは、僕にとっては、ある意味、衝撃的であった。なぜなら、ほとんどの行為者は、自分が自由意思の元に、選択をして、人生を決めているように感じている。つまり、自分の人生を生きているというわけである。

しかしながら、現実としては、各々のファクター、嗜好、財力、供給状態といったものによって、選択は左右され、一見して自由意思のように見られる人生の選択でさえ、その実、合理的な環境設定において決定されうるということであるのだ。

また、本書の大テーマである「住宅」について考えてみると、単純に「家」と言っても、それにはさまざまな要素、下記に述べられているように、象徴的な要素であったり、社会集団的な要素だったりが、複数絡み合って構成されている存在なのだということを知った。

住宅生産にまつわる多くの特徴、そして住宅メーカー間に形成される多くの関係は、象徴的要素がとりわけ大きな部分を占める住宅生産の特性に由来する。(衣服のように)皆の目にさらされ、しかもそれが長期間続くような有形財としての住宅を所有することは、他の財よりも決定的に、所有者の社会的地位やいわゆる「富」のみならず、所有者の嗜好や所有者が自らの領有行為のうちに組み込んでいる分類システムをも表現し、露わにする。この分類システムは可視的な財に客体化されており、他の人々にも象徴的領有を行う余地を与えている。

また、「家」という存在と「家族」という存在は、密接不可分の関係であるようなのだ。

ある文化的伝統、とくに農民や貴族のそれにおいては、「家」という言葉は、物質的な居住空間と、過去・現在・未来においてそこに暮らす家族との両方を不可分に指し示すことが知られている。

こんにちにおいても、「家を建てる」計画は、「家庭を築く」(あるいは家族を増やす)計画、家族成員という意味での家を築く計画、つまり居住を共にするつながりによってますます強くなるような、姻族関係・親族関係によって統合された社会集団の創設とほとんどつねに結びつけられている。

家族という単位の構築や解体(とくに離婚件数の増加や異世代同居の減少)に関する伝統の変容は、多少とも直接的に住居に関連する戦略、とくに賃借か持ち家取得かという選択に影響を及ぼす性格をもつことになる。

社会に関して、非常に有益な分析・見識が得られた。
さすがにピエール・ブルデューの本だけはある。

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死ぬまでに知っておきたい 人生の5つの秘密 ジョン・イッツォ (著) #87

4月 11th, 2009 by blogown

聖職者として働いたあと、ビジネスコンサルタントとして活躍するベストセラー作家の著者、ジョン・イッツォ氏が、アメリカのケーブルテレビ局バイオグラフィー・チャンネルの番組〈The Five Things You Must Discover Before You Die〉(死ぬまでに知っておくべき五つのこと)の制作を依頼され、周囲の人たちから「幸福な賢人」と見なされている高齢者を探し、最終的に約1000名の中から235人の60歳以上の高齢者に「幸福な人生を生きるための秘訣」についてインタビュー。そして、彼らの言葉から浮かびあがってきた「幸福に生きる秘訣」を、「5つの秘密」としてまとめたものが本書。

人生。
それは、誰しもが考えざるをえないテーマであろう。

誰もが幸福な人生を送りたいと望んでいる。
誰もが自分の人生に意味を見出したいと望んでいる。

もちろん、僕も幸福な人生を送りたいと望んでいるし、人生に意味を見出したいと望んでいる。しかし、望んだからといって、自分で見出さなければならないのだから、難しいことであろう。

内容としては、タイトルに書かれているように5つの秘密が示しているとおりだ。

第一の秘密- 自分の心に忠実であれ
第二の秘密- 思い残すことのないように生きよ
第三の秘密- 愛になれ
第四の秘密- いまを生きよ
第五の秘密- 得るより与えよ

秘密のタイトルだけで、内容も大体把握できるような気がするので、内容については本書を読んでいただくとして、僕が個人的に印象的だったのは、第五の秘密「得るより与えよ」にあった文章である。

この文章を読んだ後、自分で自分の人生の意味を考えたとき、ひとつのヒントが見つかった気がした。それは、次の文章だ。

「じきに、きみにもわかるだろう。きみは何ももっていくことはできないが、あとに何かを遺すことはできるのだ」

たしかに、僕は何ももっていくことはできないだろう。
それは、誰もが同様で、ウォーレン・バフェットやビル・ゲイツといった、どんな大富豪でも持っていくことはできない。

ただ、何かを遺すことはできるだろう。

それは、教訓や教えといったものであるかもしれないし、理念や考え方であるのかもしれない。はたまた、知識や知恵といったものなのかもしれない。

それらの「何か」を遺すということができるということ。

それは、人生の意味を考える上で、ひとつのヒントとなるような気がする。

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クリエイティブ都市論―創造性は居心地のよい場所を求める リチャード・フロリダ (著), 井口 典夫 (翻訳) #82

3月 16th, 2009 by blogown

「クリエイティブ資本論」の著者で、トロント大学ロットマン・スクール・オブ・マネジメント教授の著者、リチャード・フロリダ氏が、クリエイティブ・クラスが主導する経済において、先端的な経済発展はメガ地域に集中し、相似形になっていく世界都市の現実と近未来像を描きつつ、クリエイティブ・クラスにとっての自己実現の重要な手段となっている居住地の選択について、独自の経済分析、性格心理学の知見を使って実践的に解説したのが本書。

以前書いた記事、「メガ地域がグローバル経済を動かす – リチャード・フロリダ」の書籍化と思われる。

福岡のはずれに、おしゃれなカフェがあった。
僕はそのカフェのある山の頂上付近の展望台に行こうと車を走らせていた。

そんなときに、たまたま、そこへ行く道の途中にあったカフェだった。
そこは山奥の見晴らしのいい場所にあって、雑誌にとり上げられていたことを思い出し、偶然もあるものだと感じながらも、カフェに入ってお茶を飲んだ。

コンクリートと鉄骨でモダンな雰囲気を出しているカフェの店内に入ってみると、見晴らしのいい場所で、山の高いところから、福岡の東側が見渡せる位置にあった。

静かな店内で、僕はPCを開いてメールをした。
そうして気付く。

福岡の山奥のカフェでも、都心部のオフィスでも、東京の真ん中でも、アメリカ・ニューヨークでも、同じように仕事ができる。

これが現代の時代を象徴している姿なのだ。
つまりは、ワイヤレス通信、モバイル機器といったテクノロジーの発達と通信インフラの充実によって、僕らのビジネスの姿は、地理的な影響から解き放たれたというわけだ。

ベストセラー「フラット化する世界」の著者、トーマス・フリードマンの主張はこうだ。
世界はフラット(平ら)になった。どこに住んでいようと、グローバル経済に参加できる

しかし、本書の著者、リチャード・フロリダはこう言う。
世界はフラットではない。世界は鋭い凹凸があって『スパイキー』だ」と。

新たな経済単位である「メガ地域」がグローバル経済をかたちづくっているのだと主張する。
リチャード・フロリダの研究チームは、グローバル経済は概ね20から30という少数のメガ地域が担っているとする結論を導いた。

(注:ちなみに、「広域東京圏」「大阪=名古屋」「九州北部」「広域札幌圏」が世界の主要なメガ地域に含まれているとのことだ。うれしいかぎりだ。)

つまり、リチャード・フロリダは、グローバル経済の波とテクノロジーの発展をもってしても、なお、「住む場所」が人生、つまりは、職業、職業的成功、仕事上の人脈、快適な暮らし、伴侶を見つけることといったもの、に影響を与えると主張しているのである。

そして、僕も(おそらくは、あなたも)ぼんやりと気付いている。
いかにテクノロジーが発達して、通信手段が効率的になったとしても、依然として地理的な影響、つまり、住む場所の影響は大きいのだと。

リチャード・フロリダの長年の研究から生まれた本書から学べることは多い。

才能、イノベーション、クリエイティビティのような現代の主要な生産要素は均一に分布していない。
むしろ特定の地域に偏り、集中しているのだ。

現代のクリエイティブ経済における経済成長の真の原動力とは、才能と生産性に満ちた人々の蓄積と集中化である。
彼らが特定の地域に寄り集まって住むことで、新しいアイデアが生まれ、その地域の生産性は増加する。
集積化によって個々の生産力が高まり、今度は生産物と富の増加を生成しつつ、地域そのものの生産性を高めるのだ。

今日、世界の人々の半分以上が都市圏に住んでいる。事実、アメリカでは国内総生産(GDP)の90パーセント以上を大都市圏が担い、さらに、そのうち23パーセントを、たった5つの主要都市が稼ぎ出している。

つまり、現代において重視される才能やイノベーション、クリエイティビティをもたらす人たちは、均一に散らばっているのではなく、特定の地域に集中している、ということなのだ。

集中、集積することで、生産性が高まり、また、それが才能豊かな人たちを惹きつけることになる。
これは、都市の魅力が正のフィードバックループによって自己強化するプロセスが存在するということである。
このことがもたらす帰結は単純である。

二極化だ。

つまり、非常に高い魅力を持った都市とほとんど魅力のない都市に分かれ、魅力ある都市は才能豊かな人を惹きつけ、生産性も高まり、経済成長をもたらす、端的に言えば、成長する大都市となる。

一方で、魅力に欠けた都市は、才能豊かな人が流出してしまうことで、さらに生産性が低くなり、そのことがさらなる魅力の喪失を招き、人口の流出によって過疎化しだす、端的に言えば、衰退する都市となるわけだ。

しかし、一方で、住む場所、つまり、居住地は、経済合理性だけで選ばれるものではない。
人の居住地選択には、感情的な側面もある。

そのことについても、非常に興味深い調査結果と共に、本書で言及されている。

ロンドン大学の経済学者ナッタブド・ポウドサベーは、2007年に興味深い研究を行っている。
その内容はアンケート調査によって、頻繁に会う友人や親戚の金銭的価値を試算するものだった。

彼によると、友人や親戚と毎日欠かさず会えることは10万ドル以上の追加収入に匹敵するという。
たとえば、家族や友人に定期的に会える場所から、はるか遠くへ引っ越したとする。その喪失感は13万3,000ドルに相当するというのだ。

友人や親戚と会えることに対する価値は、非常に高い金銭的価値を持っているのだというわけだ。
続けて、リチャード・フロリダのサンプルデータからの興味深い知見も述べられる。

移動した人々もたいてい、最終的には故郷へ帰る決心をする。家族と一緒に暮らしたいから、年老いた親や子供の面倒を見るため、また生涯の友人と一緒にいたいからなど理由はさまざまだが、故郷が人を惹きつける力は途方もなく大きい。

私は本書の執筆にあたって、およそ200例もの詳細な移動のサンプルを集めたが、そのうちの多くが転居を繰り返した後、人生の後半になって故郷に戻っている

これらを総じて見ると、人の居住地は、純粋に経済合理性だけでは片づけられないように感じる(個人の価値観次第ではあるが)。それでは、いったい、どのようにして自分に適した居住地を把握すればいいのだろうか?

そのことについて言及したのが、第12章「最高の居住地を見つける方法」である。
最高の居住地を見つけるにあたり、検討すべき事項としてリチャード・フロリダは5つ挙げている(引用は抜粋)。

1. 居住地が、仕事や職業上の成功に与える影響に注意を払うべきだ。
2. 親しい知人や親類がそばにいることの有難みと、彼らから離れることによる代償を把握するのも重要だ。
3. 自分のライフスタイルに合う場所を探す時は、自分の気持ちに正直にしたがうべきである。
4. 住みたいと思った候補地が、自分の性格に合うものかどうかも熟考すべきだ。
5. 最後に、候補地が現時点のライフステージに見合うかどうかを確認することも重要である。

つまりは、仕事・職業上の成功(経済合理性)、親しい人間関係を失う代償、ライフスタイルの適合、自分の性格との適合、自身のライフステージとの適合、といった要素を検討すべき、というわけだ(この章の続きでは、実用性のあるツールとして、10のステップが書かれている)。

人生における重大な決断、つまり、「どこに住むべきか」を考える際に、これらの知識を持っておくことは非常に有益なことだと感じた。また、個々人のライフステージによって居住地が変わること、検討事項の考慮は、今後の指針となるだろう。

経済がグローバル化して、ますます重要度を増している「場所(ロケーション)」。

これからますます、地域間に格差が生じていくことになると同時に、どの地域に住むべきかという判断を迫られるようになる現代人。
そんな現代人が人生の節目節目で、参照すべき書だと思う。

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プーア・リチャードの暦 ベンジャミン フランクリン (著) #81

3月 12th, 2009 by blogown

印刷業で成功を収めた後、政界に進出しアメリカ独立に多大な貢献をし、多くのアメリカ人の価値観に影響を与えた(米100ドル紙幣に肖像がある)ベンジャミン・フランクリンが書いた教訓やことわざが書かれた暦が本書。

総じて言えば、「勤勉と倹約」を主とした価値観であり、古風でありながら、なおも輝きを失わない普遍的なもののように感じる。

そこで、本書から、いくつもの印象的な部分を引用してみる。

人生を大切にしたいとおっしゃるか?
ならば時間を無駄に使いなさるな。

時間こそ、人生を形作るのに一番大事なものだからと、プーア・リチャードは言っています。

時間の浪費こそ一番のぜいたく

そして、彼がほかでも言っているように、

時間の遺失物は、間違っても見つかりっこない

時間は大切なのだとじんわりと感じさせる内容です。

井戸枯れて、水の有り難さを知る
お金の有難味を知りたくば、借金をしに行きなさい

お金を借りに行くことは、悲しみを借りに行くこと
着道楽は禍のもと、道楽気分を相談する前に懐と相談しなさい

虚栄心の物欲しさは、物乞いのようにしつこい。いやはるかに図々しい
最初の欲望を抑えるほうが、次々起こる欲望を全部満足させるよりも易しい

富者への道は、もしそれをお望みならばですが、簡単なことなのです。
要するに取り引きのやり方と同じことなのです。
それには二つの言葉が大切です。

勤勉と倹約です。

時間とお金を決して浪費することなく、この二つを最大限に活用するのです。

勤勉と倹約がなければ何事も成就しません。
勤勉と倹約があれば何事も成就します。
正直に働いてお金を得、得たお金は貯金する(必要な支出は別ですが)、そういう人は、必ず裕福になります。

勤勉とは、時間の浪費をしないこと。
倹約とは、お金の浪費をしないこと。

それは、極めて合理的で、充実した人生を送るための秘訣でもあるだろう。

資源はかぎられている。
お金は稼げば増えるかもしれないが、時間は厳然たる事実として有限なのだ。

だからこそ、一番のぜいたくである「時間の浪費」をせず、富者となるためにお金の浪費をせず生活すること。
自分の生き方、人生について考えさせられる一冊。
だからこそ、アメリカ人の価値観に影響を与えることになったのだろう。

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となりの億万長者―成功を生む7つの法則 トマス・J. スタンリー (著), ウィリアム・D. ダンコ (著) #80

3月 7th, 2009 by blogown

アメリカにおける富裕層マーケティングの第一人者であるトマス・J. スタンリー氏とニューヨーク州立大学オルバニー校のマーケティング学部准教授であるウィリアム・D. ダンコ氏が、アメリカの億万長者の驚くべき暮らしぶりを徹底的に取材・調査し、その分析結果から発見された、人生に成功をもたらす「ミリオネアの知恵」について語ったのが本書。

本書で、特に印象的だったのは、億万長者のライフスタイルについてだ。

人は、食べ物や飲み物の嗜好、スーツや時計など身につけるもの、車などで相手を判断するきらいがある。優秀な人は洗練された好みを身につけていると決めてかかっている。しかし、金を貯めて金持ちになるよりも、ものを買うほうがずっと簡単だ。考えて見れば、時間と金をかけて趣味のよいものを身につければ、その分、金が貯まらないのは理の当然というものだ。

金持ちの特徴を三つの言葉で言い表せば

倹約、倹約、倹約

である。
ウェブスターの辞書で「倹約」をひくと「無駄を省く行動」とある。倹約の反対語は浪費である。私たちは、惜しげもなく、どんどんものを買うライフスタイルを浪費と定義する。倹約は資産形成の第一歩だ。

本書では、倹約というテーマについて、重点的に語られているが、それは資産形成における倹約のポジションが非常に大きなことを意味している。

倹約というと、生活を切り詰める、我慢する、というイメージがあるが、辞書の定義によると、「無駄を省く行動」だそうだ。そう考えると、非常に合理的な行動だとわかる。

不必要なものを買わない、本当にほしいというわけではないものは買わない。
そういう行動が倹約であるというわけだ。
非常に合理的。

金持ちの数が少ない理由
なぜ、アメリカにはこんなに金持ちが少ないのか。年収10万ドル以上稼いでいても、金持ちといえる世帯は少ない。

アメリカ人の大半は、明日の金を今日使う。ローンに追われ、稼いでは使う、使っては稼ぐというように、コマネズミのように同じ輪の中をクルクルと走り回っている。ものをふんだんに持っていないと裕福ではないと思い込んでいる。

◆競売人は倒産に詳しい。
彼らは、消費財は買った値段の数%でしか売れないことを知っている。だから彼らは無駄遣いをしない。ある競売人はなぜ、倹約家になったか話してくれた。

小さい頃、女の人が泣いているのを目撃したんです。庭の椅子に座ってね。泣いている間にその女の人が持っていたものは全部競売で持っていかれてしまった。あの女の人のことは脳裏に焼きついています。一生忘れることはないでしょう。

人は、単純に、その人の持ち物で相手を判断しがちである。
よく言われるように、セールスマンは身なりがいいほうが、売上も上がる、というわけだ。

しかし、いい持ち物を持つと、反対に、お金を失っている、とも言える。

この問題は、実際には蓄財、というよりも、「何にお金を分配するのか?」というテーマに集約される。

持ち物、たとえば、スーツや時計、車などに、お金を分配するということは、上記のように消費財は買った価格の数%でしか売れないということから見ても(たとえば、スーツはまず転売できないだろうし、車でさえ、毎年、かなりの金額が目減りすることになる)、価値が時とともに減少していく資産への分配と見ることができる。

要するに、お金を失っているというわけだ。

資産形成のためには、倹約が重要。
無駄を省く行動(倹約)をしながら、これからのために行動していきたい。

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ティッピング・ポイント―いかにして「小さな変化」が「大きな変化」を生み出すか マルコム グラッドウェル (著) #79

3月 5th, 2009 by blogown

『ワシントン・ポスト』紙のビジネス、サイエンス担当記者を経て、雑誌『ニューヨーカー』のスタッフライターとして活躍中の著者、マルコム・グラッドウェルによる著作。世界的な大ベストセラー。

本書のタイトルである「ティッピング・ポイント」とは、あるアイディアや流行もしくは社会的行動が、敷居を越えて一気に流れ出し、野火のように広がる劇的瞬間のこと。

たとえば、それまで知られていなかった本が一躍ベストセラーになる現象などが、どのようなプロセスによって起こっているのかについて、また、犯罪率が著しく増減したりといった謎の多い現象を解明しようとしたのが本書。

本書では、爆発的感染の3原則として、原則1:少数者の法則、原則2:粘りの要素、原則3:背景の力、という3つをあげている。

本書で最も印象的だったのは、やはり「少数者の法則」で書かれている、スタンリー・ミルグラムの実験に代表されるコネクター論の部分だ。

ミルグラムは、ネブラスカ州のオマハに住む160人の住所・氏名を電話帳から入手し、それぞれに手紙を郵送。その手紙には、マサチューセッツ州のボストンで株式仲買人として働き、シャロンに住んでいる人物の名前と住所が入っている。それを受け取った人はその手紙にさらに自分の氏名を記し、株式仲買人のより近くに住んでいる友人や知り合いに転送するように指示されている。

そしてミルグラムは、ほとんどの手紙が株式仲買人に届くまでに五段階か六段階経ていることを発見した。
この実験から、関係の六段階分離という概念が生まれた。

このことは、広く知られており、「Six degrees of separation」として有名だ。

本書で、もうひとつ注目すべき点が書かれており、それは以下のことだ。

わたしたちはほとんどの場合、それほど広範囲で多岐にわたる交友関係を持っているわけではない。ある心理学者のグループによる有名な調査研究によると、マンハッタン北部に建設された公営集合住宅「ダイクマン」の居住者に親しい友人の名前を挙げてもらったところ、その友人の八八%は同じビルに住み、さらにその半数が同じ階に住んでいるという結果が出ている。

つまり、ほとんどの人にとって、社会とは、少数の人(調査・研究によれば、小さな物理的空間を共有している人がほとんど)とのつながりでしかないということになる。短く言えば、範囲は狭く、限られた交友関係によって、その人の社会は構築されているわけだ。

しかし、その一方で、ミルグラムの実験を見るとわかるように、遠くの株式仲買人に手紙を届けるのに6段階程度しか、関係性のつながりを要しないという。なぜか。それは、「コネクター」が、個々の(ある種、孤立しかかっている)社会をつなげているからだ。

シャロンにある株式仲買人の自宅まで届いた二四の手紙のうち、一六の手紙は、ミルグラムがジャコブ氏と呼ぶ織物商の手で本人に渡されていることがわかった。

残りの手紙は株式仲買人の事務所に届いているが、その大半は、ミルグラムがブラウン氏およびジョーンズ氏と呼ぶ二人の人物を通じている。合計すると、株式仲買人の手元に届いた手紙の半分がこれら三人の人物の手で本人に届けられていたのである。

関係の六段階分離説は、すべての人が自分を除くすべての人とちょうど六段階でつながっていることを意味しているのではない。ごく少数の人がわずかな段階でその他すべての人とつながっていることを意味する。残る人々はこの特別な少数者を通じて世界とつながっているのである。

世界を束ねる特殊な才能を持っているこのような人々を、本書では媒介者(コネクター)と呼ぶ。

僕らの世界は、コネクターによってむすびつけられている。
世界の裏側について、思いをはせることのできる一冊。

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コンサルタントの秘密―技術アドバイスの人間学 ジェラルド・M・ワインバーグ (著) #67

1月 4th, 2009 by admin

1956年頃からIBMにて13年間勤務した後、コンサルティングと教育に携わり、著書・共著は合わせて30冊以上を誇り、数百もの記事を寄稿している、コンピューター業界で広く知られているコンサルタントである著者、ジェラルド・ワインバーグ(ジェリー・ワインバーグ)が、自身の発見について述べたのが本書。

目次 -Amazon.co.jp

第1章 コンサルタント業はなぜ大変か
第2章 逆説的思考育成法
第3章 わからないことをしているときでも有効であるの法
第4章 そこにあるものを見るの法
第5章 そこにないものを見るの法
第6章 わなから逃れるの法
第7章 インパクトをふくらますの法
第8章 変化を飼い慣らすの法
第9章 変化を安全に起こすの法
第10章 抵抗に出会ったら
第11章 サービスの売り出しかた
第12章 自分に値段をつけるの法
第13章 信頼を勝ち得るの法
第14章 アドバイスを人に聞いてもらうの法
参考書およびその他の経験―もっと知りたい人のためのガイド

著者のジェリー・ワインバーグは、言う。

『コンサルタントの仕事とは、私の定義によれば「人々に、彼らの要請に基づいて影響を及ぼす術」というものである。人々はある種の変化を望む、またはある種の変化を恐れてコンサルタントの何らかの形の手助けを求めるのである。』

たとえば、僕(竹内正浩)は、一応、経営コンサルタントと名乗っているが、ワインバーグの定義に照らしてみると、こうなる。

「専門家(プロフェッショナル)、高度な知識を必要とする知識型ビジネスの経営者[人々]に、業績アップや顧客獲得の要請[彼らの要請]に基づいて、それらを達成する影響を及ぼす」

別に、経営コンサルタントだけがコンサルタントなわけではない。ワインバーグは、こうも言う。

『もし読者が隣人に、芝生のヒメシバをとるには何を使っていますかと聞いたとすれば、読者はコンサルタントを使っていることになるのだ』

つまり、人の日常は、コンサルタントに満ちていて、時には、自分自身が誰かのコンサルタントとなっているというわけだ。

では、この本は、どのような本なのか?

『この本は、影響してくれという要請をめぐる、一見非合理的な行動にひそむ合理性に関しての、私の発見を述べたものである。それがコンサルタントの秘密である。この表題から見て、この本はコンサルタントのための本だという感じを持たれる向きもあるかもしれないが、実はこの本はわれわれのこの非合理的な世界の中で混乱し、それについて何かをしたいと思っているすべての人々のための本なのである。』

と、婉曲的な言い回しで、わかりづらいかもしれないが、要するに、本書の読者層は、かぎりない、というわけだ。

たしかに、本書は、このような言い回しが多く、読みづらい感があることは事実である。
しかし、それをおぎなって余りあるほどの価値ある書籍なのだ。

特に印象的だった部分をあげると、「ルウディーのルタバガ法則」がある。

正直に言って、ストーリー部分が多く(自分(竹内正浩)の本も多いくせに、とお思いでしょうが・・・すみません)、非常にウィットやユーモアに富んだ内容なのであるが、ここでそれを書いていると、余計な文章になってしまうので、避けておいて、要約してみる(ただ、そこが良さでもあるので、ぜひ購入されて、読んでいただくことをおススメします)。

著者のジェリー・ワインバーグが13歳のとき、スーパーマーケットの臨時在庫係になった。
ジェリーが仕事に慣れていくと、あるパターンに気付いた。

それは、ルタバガ(カブランカン)が、ずっと飾り物となっており、いまだかつて買った人がいない、ということだった。
小売業にとって、売場スペースは、貴重な資源であり、重要だ。

そんなある日の朝、食品売場のマネージャーのルウディーと売場で、野菜を限られたスペースに、どうやって配置しようかと考えていた。

ジェリーは言った。

「気がついたんですけど、ルタバガはあんまり売れてないみたいですよ。それどころか、うちじゃ一番売れない野菜みたいなんです。もしルタバガには全然スペースを使わないことにして、それをほかのものに使ったらうんと損になるでしょうか。」

ルウディーは、バナナの空き箱に、ルタバガをぶちこみながら、言った。
「そりゃいい考えだぜ、坊や。」
ルタバガがなくなったスペースを眺めて、彼はこう言った。

さて坊や、そいつはいい考えだったよ。で、一番人気のない野菜は、今度は何だね。

「ルウディーのルタバガ法則」

第一番の問題を取り除くと、第二番が昇進する

この後のジェリーの文章は、とても刺激的だ。

コンサルタントとして私は、ときにあまりに深く依頼主の問題に首を突っ込みすぎて、それらを本当にきれいさっぱり片づけられると信じそうになることがある。だがルウディーの法則によれば、つねにもう一つ問題が残っているのだ。

問題が山積していて、多忙な日々を送っている人は、おそらくこう思ったことがあるだろう。
「問題が、まったくなくなって、すべて解決してくれればいいのに」

しかし、現実は厳しいもので、ルウディーのルタバガ法則によれば、問題がすべて解決することはないということになるのだ。
つまり、ある問題が解決すると、次の問題が昇進して、第一番目の問題と化すからである。

これは、非常に衝撃的な事実を示唆している。
つまり、人生において、人は、問題から解放されることはない、ということである。

常に、何らかの問題を抱えながら、人は生きていかなければならないというわけだ。
しかし、逆に、この法則を知っておくと、有意義なことがある。

それは、「問題から解放されることはない」と認識して、対処することができるからだ。
別の表現でいえば、問題から逃げるのではなく、問題に立ち向かうことができるということだ。

たとえば、ある問題に直面しているとする。
法則を知らない人は、こう思う。
「この問題を解決すれば、すべてきれいさっぱり、解放されて、スッキリすることができる」

しかし、法則を知っていれば、「この問題を解決しても、また、別の問題が来るものだ。特に淡い期待をせず、問題に対処し、問題解決のプロセスを充実してすごしつつ、今後の問題に対しても、きちんとした姿勢であたるようにしよう」という(あくまで例であるが)とらえかたができる。

端的に、この法則の効果を言えば、現実への適切な対処、心がまえ、心の準備ができるということだろう。
淡い期待と落胆の繰り返しを防ぎ、感情のブレが起こらずにすむ、心穏やかに問題に対処できる。

このような効果が得られよう。

たしかに、本書を読んだからといって、「即座に成功!」というものではないかもしれない。
しかし、人生の予備知識として、非常に有益な書籍であることは間違いないだろう。

67冊目

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