シンプルに生きる ドミニック ローホー (著) #152

8月 21st, 2010 by blogown

シンプルに生きる ドミニック ローホー (著) #152

ものを持たない暮らしがテーマのこの本。

この本には、「これはスゴイテクニック」とか「これはスゴイコンセプトだー」とか言うのはない。

けれど、何がいいかというと、それは、ものを持たない暮らしについて、再認識させてくれるからだ。

タイトルにもあるように、シンプルに生きる。
整理整頓がなかなか思うようにいかない自分にとっては、受け入れるべきメッセージだった。

資本主義経済体制下に生きているだけあって、企業の宣伝広告にのせられて、ものを過剰に所有しがちだ。
過剰消費、過剰摂取。
「物質的な豊かさ=富」だという先入観に染められている以上、どうしてもそうなってしまう。

でも、本当は、もっとシンプルにして、本当に必要なものだけを残して、あとはなくしてしまう、手に入れないという選択が良いのだと思う。

そして、本当は過剰であることには弊害がつきまとうということも理解しておくべきだろう。

たとえば、過剰な書類の山があったとすれば、探す時間がかかる。
過剰なものがあれば、スペースもなくなる。
そして、過剰なものに使ったお金は実際には不要なはずで、ムダ遣いだったということになる。

とりあえず、身の回りにあるものから捨てていって、できるかぎりシンプルなかたちにしていこうと思う。

そう思わせられた一冊。

表紙のデザインもシンプルで上品。

シンプルに生きる ドミニック ローホー (著) #152

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結婚戦略―家族と階級の再生産 ピエール・ブルデュー (著) #90

4月 28th, 2009 by blogown

著書『ディスタンクシオン』で有名なフランスの社会学者である著者、ピエール・ブルデューが、1950年代に独身者数の増大に悩む生まれ故郷ベアルン(フランス農村)での、結婚市場をめぐる調査から、婚姻交換システムの変容とそれがもたらした結果について述べたのが本書。

もちろん、僕は戦前生まれではないので、だいぶ昔の結婚事情については知らない。しかし、漠然としてではあるが、日本史の勉強を通して、また、世間での常識を通して、認識してはいる。

それは、家同士のつながりで、長男が家督相続して、お見合いがほとんどであった、というような具合である。本書の著者(そして、僕が敬愛する)ピエール・ブルデューは、冒頭部において、そのことについて、端的に説明してくれている。

1914年以前には、婚姻は非常に厳格な規則により規制されていた。婚姻が家族的農業経営の将来全体を左右していたために、また婚姻が非常に重大な経済的交渉の機会でもあったために、さらにそれが社会的なヒエラルキーや、このヒエラルキーにおける家族の地位を再確認させることになったために、婚姻とは、個人というよりも集団の関心事なのであった。結婚するのは家族であったし、人は家族と結婚したのである。

婚姻は、家産の一体性を損なうことなく家系の継続性を保証することを第一次的機能としている。

結婚はかつて、一個人の問題ではなく、家族、ひいては一族という社会集団における問題であったことがわかる。

現代では、それらの価値観が比較的薄くはなってきているのでわかりづらいが、かつては、このようなかたちで、集団を中心とした結婚が行われていたというわけなのである。

また、ブルデューは、現代の自由恋愛結婚市場について、かなり以前から深い見識を持っていたということがわかる。

親の権威の弛緩と若者の新しい価値観への接触によって、家族は結婚の成立における積極的な仲介者としての役割を奪われた。それと同時に「仲人好きの人」の介入はあまり見られなくなった。

その結果、結婚相手探しは個人のイニシアチブに委ねられることになった。旧来のシステムでは「口説くこと」をせずに済ますことができたし、口説く技巧をまったく知らずにいることもできた。しかし今やすべてが変わってしまったのである。

婚姻交換システムに、個人間競争の論理によって支配されるシステムが取って代わった。

「個人間競争の論理によって支配されるシステム」それこそが、現在の「自由恋愛結婚市場」のことなのである。

これまでの家族・一族という集団主体のシステムでは、お見合いが頻繁に行われ、良縁を提供してきた。そのため、ブルデューが述べるように『「口説くこと」をせずに済ますことができたし、口説く技巧をまったく知らずにいることもできた』わけだ。

しかし、時代が変わり、「個人間競争の論理によって支配されるシステム」が現状を支配するようになり、個々人はお互いに競争をしながら、結婚相手探しをしなければならなくなったのである。しかも、集団の支援なく、個人のイニシアチブによって、である。

この個人のイニシアチブによって、結婚相手探しを行うという競争原理が支配する、自由恋愛結婚市場が、どのような事態をもたらすのだろうか。それは、現在の日本を見ればわかるのであるが、ブルデューはインタビューによって、それらの問題について表現している。

この男が「押しの強い人」でないならば、どうやって機会を捕まえればいいのか。

女性との接触がないってことは、最も大胆な者に対してさえコンプレックスを与えてるものなんだよ。その人が、性格的に少し臆病な場合には、ことは一層深刻だな。

娘との絶えざる接触によって臆病さは克服されるだろうけど、しかしこうした接触がないような場合にはいっそう深刻になるってもんさ。自尊心の形をとった、嘲笑されるんじゃないかってことへの危惧にがんじがらめにされることもありうるだろうね。

臆病さは、時として誤った自尊心でもあってね、片田舎から出てきたという事実、こうしたすべてのことが、娘と有望な青年との間に溝をつくるんだよ

集団の支援なく、個人のイニシアチブによって結婚相手を探すということは、機会を手に入れることが個々人によって、差が生じることを意味している。

つまり、「押しの強い人」であれば、機会をとらえやすい反面、臆病な人であれば、機会をほとんどとらえることができなくなってしまうというわけなのである。

インタビューでは、有望な青年が、片田舎から出てきたという事実、コンプレックスでさえ、機会を失わせてしまうということについて述べている。

加えて、ここで興味深いことは、二極化の原理を示唆した表現があるところである。いわく、『女性との接触がないってことは、最も大胆な者に対してさえコンプレックスを与えてるものなんだよ。その人が、性格的に少し臆病な場合には、ことは一層深刻だな。娘との絶えざる接触によって臆病さは克服されるだろうけど、しかしこうした接触がないような場合にはいっそう深刻になるってもんさ』。

つまり、そもそも機会がない人の場合、慣れというメリットを得ることが難しい。

男性と女性との間でいえば、男性は『娘との絶えざる接触によって臆病さは克服されるだろう』けれども、そうした接触の機会がなければ、慣れることがなく、状況はより悪化してしまう。

その反面、機会をふんだんに得ている人は、その逆のパターン、つまり、正のフィードバックループが生じる。そもそも機会がある人は、慣れやすい。それが多少、臆病な者であっても、慣れてしまうことで、克服することができる。そうなると、ますます機会をとらえやすくなるのである。

要するに、機会の多い者は、より機会が多くなり、より機会をとらえやすくなるのである。その反面、機会のない者は、そもそも機会がなく、少ない機会をとらえることができず、機会をとらえる能力も向上しづらく、機会の多い者の能力には明らかな見劣りがしてしまうことになるのである。

個人のイニシアチブによって、結婚相手探しを行うという競争原理が支配する、自由恋愛結婚市場。それは、経済における自由市場原理と同種といえる。

経済においても、富める者と貧しい者が存在しているように、自由恋愛結婚においても、機会の富める者と貧しい者が存在する。

それは、自由市場における二極化という現象。
さて、このような状況下で、僕らはどうやって生きるべきだろうか。

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非モテ!―男性受難の時代 三浦 展 (著) #84

3月 25th, 2009 by blogown

ベストセラー「下流社会」の著者でマーケティング・アナリストの著者、三浦展氏が、若者(男性)世代では「容姿」が格差意識の原因となりつつあること、「プレゼン力」「人間力」重視の果てにある「容姿決定社会」の実態について書いたのが本書。

ベストセラー『「婚活」時代』と系統の近い、恋愛結婚市場論についての書籍。

自分自身がロストジェネレーション世代であることから、この現代の恋愛結婚市場論については非常に興味があり、色々と調べているところ。本書も、非常に興味深いことが書かれており、参考になる。

最近の女性側のニーズは、より高い方向へと向かっているらしい・・・。

かつて「三高」という言葉があった。女性が結婚相手の男性に求めるものとして、身長、学歴、年収の三つが高いことが条件だという意味である。しかし最近は「三低」という条件もあるそうだ。

これは「低姿勢・低依存・低リスク」を意味する。ウィキペディアなどによれば、「低姿勢」は女性に対して威張らない、「低依存」は家事や身の回りのことを妻に頼らない、「低リスク」はリストラや事故・事件等に巻き込まれることの少ない職業に就いていることである。

これらは、現代女性の社会進出にともない、女性自身である程度の生計を立てることが可能になったことに加え、自己主張が可能になったことから導かれるものと思われる。

つまり、選択できる立場になっているのであるから、安易な妥協は避けようとするわけだ。安易な妥協を避け、自分より高スペックな男性、つまり、上方婚を求めるようになるというわけだ。この種の議論は、『「婚活」時代』にもよく述べられている。

その一方で、女性と男性の間には、文化的な側面において、同様のシフトが行われないという現実があるのだという。

女性は男性よりも経済力と文化力が比例しやすいと言われる。具体的に言うと、自分や夫や親の所得や学歴が高いと、女性の趣味はクラシックのコンサート、歌舞伎鑑賞、茶道、華道、ピアノ、バレエ、ワインなど正統的なものが増える。男性もそういう傾向はあるが、女性よりはずっと弱い。

女性が社会進出し、年収や学歴などの階層が高い女性が増えれば、女性は自分より階層が低い男性とは趣味が合わなくなるし、階層が同じ男性とすら合わなくなるだろう。女性よりも男性のほうが階層がずっと上でないと趣味が合わないということになりやすい。しかしそういう男性の数は限られている。それが未婚化が止まらない理由のひとつであろう。

これは現代の恋愛結婚市場論における重要な問題である、相互のスペックにおけるギャップである。

女性は自分と相性のいい、端的に言えば、趣味の合う、自分に釣り合うようなスペック(はっきり言えば、身長、学歴、年収だろうが)を持った男性を求める。そして、それは最低でも自分と同じか、それ以上のスペックである必要がある。

上記の引用を以て言えば、女性の階層上昇にともなう文化力の向上は、男性では行われないことから、自然と要求されるスペックを満たす男性の絶対数が限られるという帰結になる。ここまでは、単純であろう。

ここまでの議論を端的に言えば、「スペックの高い女性のハイエンド化(つまり、自身のスペックのハイエンド(上層)化であり、嗜好のハイエンド(高級)化であり、要求のハイエンド化である)は、要求を満たす男性の母集団を制限してしまう」という意味である。

しかし、その一方で、スペックの高い女性のハイエンド化は、往々にして、その女性の商品価値を高めるということには結びつかないということが状況を悪化させていると見られる。

これらの状況をせんじつめて言えば、「デキる女性だからといってモテるわけではない」、より深くえぐって言うと、「デキる女性であればあるほど、男は引いてしまう」という現代事情があるのだ。

また、スペックの高い女性は、そのスペックの向上そのものに膨大なリソースを傾けているという背景がある。それは、スペックを上昇(年収アップ、スキルアップ)させるためには、それなりにすべきことがあるからである。

ここで言うリソースは、お金であり、エネルギーであり、時間である。総じて、時間のファクターは婚活市場においては、極めて重要なインパクトを持っている。

要点は2つ。

1.スペック向上に傾けた時間は、同時に、婚活に要する時間の喪失を意味する
2.時間の経過は、(非情ではあるが)女性の商品価値が劣化していくことを意味する

1.スペック向上に傾けた時間は、同時に、婚活に要する時間の喪失を意味する

結婚するには、時間が必要だ。
それは、少し考えれば、わかるだろう。結婚するまでに、お互いを知るための時間が必要になる。それは、一週間では不十分だとはわかる。

つまり、二人が出会い、付き合い、結婚するという一連のプロセスにおいて、「結婚とそれに伴う準備期間でさえ、時間が必要」なのである。

人生は有限である。何かに時間を費やせば、それ以外のことに同時に時間を費やすことはできなくなる。つまり、人生はトレードオフの連続であるというわけだが、それは婚活においては非常に大きな意味を持つのだ。

短く言えば、仕事を頑張ったり、スキルアップに励めば、それに費やした時間だけ、婚活にかける時間が減ってしまうということなのだ。

2.時間の経過は、(非情ではあるが)女性の商品価値が劣化していくことを意味する

花の命は短い。
大変、非情な表現ではあるし、個人的な意見は別としても、世の男性の価値観は、女性の年齢を重視してしまうと見ることができる。

端的に述べていくと、女性がスペック向上に励み、より高スペックになればなるほど、時間が経ってしまい、自分自身の商品価値が劣化していくことになるのである。悲しいことではあるが、否定できない現実であることは、周りを見渡せばわかる。

これらのことは、つまりは、高スペックな女性が未婚化・晩婚化してしまう要因と言えよう。

ここまで、相互のスペックにおけるギャップについて、女性の側面から見てきたが、男性の側面から見ても面白いことがわかる。

これまで述べてきたように、高スペックな女性は自分の要求を満たすことのできる超高スペックな男性を求めているのであるが、第一に要求を満たす男性の母集団はスペックにより制限され、そもそもの人数が少ないということがある。

加えて、それらの超高スペック男性は、スペックの高さゆえ、非常に多忙である。そのため、通常の出会いがないことが多い。

そして、さらには、超高スペック男性は、そのスペックの高さゆえ、高スペック女性と同様に、要求が高いのだ(笑)。しかも、ここでの男性の要求は、女性にとっては都合の悪いことに、「女性自身が思うスペックの高さではない」のである。端的に言えば、超高スペックの男性が女性自身の思う高スペックの女性、つまりは、「自立した女性」を好むのかというと、そうではないのだ。

超高スペック男性は、すでに高収入を得ているのだから、女性に稼いでもらう必要もない。そのため、専業主婦になってもらいたかったり、おしとやかで自分をサポートしてくれるような女性を求めているのである。加えて言えば、男性目線でのスペックの高さは、年齢の若さであったりする場合も多々あるのである。

このため、「自立した女性、高スペック女性」は、二重の意味での制約を受ける。つまり、1.自分より高スペックな男性は少なく、2.条件を満たす超高スペック男性は自分を選んでくれる可能性が低めである、ということである。

このように、私的な観察から得られた知見を踏まえた上での結論として、現代の恋愛結婚市場には、相互のスペックにおけるギャップが存在するわけである。

『「婚活」時代』では、「婚活(結婚活動)をせよ」と主張されている。

誰しもが理想的な結婚、つまりは理想婚を望んでいることだろう。しかし、現代事情は、妥協婚せざるを得ない状況の人々を生み出してもいる。これこそが、現代恋愛結婚市場の自由市場化のもたらした結果であろう。

現在、経済も、市場主義経済体制の影響で、不況を呈している。
その一方で、結婚市場でも、市場主義の影響があらわれているようである。

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クリエイティブ都市論―創造性は居心地のよい場所を求める リチャード・フロリダ (著), 井口 典夫 (翻訳) #82

3月 16th, 2009 by blogown

「クリエイティブ資本論」の著者で、トロント大学ロットマン・スクール・オブ・マネジメント教授の著者、リチャード・フロリダ氏が、クリエイティブ・クラスが主導する経済において、先端的な経済発展はメガ地域に集中し、相似形になっていく世界都市の現実と近未来像を描きつつ、クリエイティブ・クラスにとっての自己実現の重要な手段となっている居住地の選択について、独自の経済分析、性格心理学の知見を使って実践的に解説したのが本書。

以前書いた記事、「メガ地域がグローバル経済を動かす – リチャード・フロリダ」の書籍化と思われる。

福岡のはずれに、おしゃれなカフェがあった。
僕はそのカフェのある山の頂上付近の展望台に行こうと車を走らせていた。

そんなときに、たまたま、そこへ行く道の途中にあったカフェだった。
そこは山奥の見晴らしのいい場所にあって、雑誌にとり上げられていたことを思い出し、偶然もあるものだと感じながらも、カフェに入ってお茶を飲んだ。

コンクリートと鉄骨でモダンな雰囲気を出しているカフェの店内に入ってみると、見晴らしのいい場所で、山の高いところから、福岡の東側が見渡せる位置にあった。

静かな店内で、僕はPCを開いてメールをした。
そうして気付く。

福岡の山奥のカフェでも、都心部のオフィスでも、東京の真ん中でも、アメリカ・ニューヨークでも、同じように仕事ができる。

これが現代の時代を象徴している姿なのだ。
つまりは、ワイヤレス通信、モバイル機器といったテクノロジーの発達と通信インフラの充実によって、僕らのビジネスの姿は、地理的な影響から解き放たれたというわけだ。

ベストセラー「フラット化する世界」の著者、トーマス・フリードマンの主張はこうだ。
世界はフラット(平ら)になった。どこに住んでいようと、グローバル経済に参加できる

しかし、本書の著者、リチャード・フロリダはこう言う。
世界はフラットではない。世界は鋭い凹凸があって『スパイキー』だ」と。

新たな経済単位である「メガ地域」がグローバル経済をかたちづくっているのだと主張する。
リチャード・フロリダの研究チームは、グローバル経済は概ね20から30という少数のメガ地域が担っているとする結論を導いた。

(注:ちなみに、「広域東京圏」「大阪=名古屋」「九州北部」「広域札幌圏」が世界の主要なメガ地域に含まれているとのことだ。うれしいかぎりだ。)

つまり、リチャード・フロリダは、グローバル経済の波とテクノロジーの発展をもってしても、なお、「住む場所」が人生、つまりは、職業、職業的成功、仕事上の人脈、快適な暮らし、伴侶を見つけることといったもの、に影響を与えると主張しているのである。

そして、僕も(おそらくは、あなたも)ぼんやりと気付いている。
いかにテクノロジーが発達して、通信手段が効率的になったとしても、依然として地理的な影響、つまり、住む場所の影響は大きいのだと。

リチャード・フロリダの長年の研究から生まれた本書から学べることは多い。

才能、イノベーション、クリエイティビティのような現代の主要な生産要素は均一に分布していない。
むしろ特定の地域に偏り、集中しているのだ。

現代のクリエイティブ経済における経済成長の真の原動力とは、才能と生産性に満ちた人々の蓄積と集中化である。
彼らが特定の地域に寄り集まって住むことで、新しいアイデアが生まれ、その地域の生産性は増加する。
集積化によって個々の生産力が高まり、今度は生産物と富の増加を生成しつつ、地域そのものの生産性を高めるのだ。

今日、世界の人々の半分以上が都市圏に住んでいる。事実、アメリカでは国内総生産(GDP)の90パーセント以上を大都市圏が担い、さらに、そのうち23パーセントを、たった5つの主要都市が稼ぎ出している。

つまり、現代において重視される才能やイノベーション、クリエイティビティをもたらす人たちは、均一に散らばっているのではなく、特定の地域に集中している、ということなのだ。

集中、集積することで、生産性が高まり、また、それが才能豊かな人たちを惹きつけることになる。
これは、都市の魅力が正のフィードバックループによって自己強化するプロセスが存在するということである。
このことがもたらす帰結は単純である。

二極化だ。

つまり、非常に高い魅力を持った都市とほとんど魅力のない都市に分かれ、魅力ある都市は才能豊かな人を惹きつけ、生産性も高まり、経済成長をもたらす、端的に言えば、成長する大都市となる。

一方で、魅力に欠けた都市は、才能豊かな人が流出してしまうことで、さらに生産性が低くなり、そのことがさらなる魅力の喪失を招き、人口の流出によって過疎化しだす、端的に言えば、衰退する都市となるわけだ。

しかし、一方で、住む場所、つまり、居住地は、経済合理性だけで選ばれるものではない。
人の居住地選択には、感情的な側面もある。

そのことについても、非常に興味深い調査結果と共に、本書で言及されている。

ロンドン大学の経済学者ナッタブド・ポウドサベーは、2007年に興味深い研究を行っている。
その内容はアンケート調査によって、頻繁に会う友人や親戚の金銭的価値を試算するものだった。

彼によると、友人や親戚と毎日欠かさず会えることは10万ドル以上の追加収入に匹敵するという。
たとえば、家族や友人に定期的に会える場所から、はるか遠くへ引っ越したとする。その喪失感は13万3,000ドルに相当するというのだ。

友人や親戚と会えることに対する価値は、非常に高い金銭的価値を持っているのだというわけだ。
続けて、リチャード・フロリダのサンプルデータからの興味深い知見も述べられる。

移動した人々もたいてい、最終的には故郷へ帰る決心をする。家族と一緒に暮らしたいから、年老いた親や子供の面倒を見るため、また生涯の友人と一緒にいたいからなど理由はさまざまだが、故郷が人を惹きつける力は途方もなく大きい。

私は本書の執筆にあたって、およそ200例もの詳細な移動のサンプルを集めたが、そのうちの多くが転居を繰り返した後、人生の後半になって故郷に戻っている

これらを総じて見ると、人の居住地は、純粋に経済合理性だけでは片づけられないように感じる(個人の価値観次第ではあるが)。それでは、いったい、どのようにして自分に適した居住地を把握すればいいのだろうか?

そのことについて言及したのが、第12章「最高の居住地を見つける方法」である。
最高の居住地を見つけるにあたり、検討すべき事項としてリチャード・フロリダは5つ挙げている(引用は抜粋)。

1. 居住地が、仕事や職業上の成功に与える影響に注意を払うべきだ。
2. 親しい知人や親類がそばにいることの有難みと、彼らから離れることによる代償を把握するのも重要だ。
3. 自分のライフスタイルに合う場所を探す時は、自分の気持ちに正直にしたがうべきである。
4. 住みたいと思った候補地が、自分の性格に合うものかどうかも熟考すべきだ。
5. 最後に、候補地が現時点のライフステージに見合うかどうかを確認することも重要である。

つまりは、仕事・職業上の成功(経済合理性)、親しい人間関係を失う代償、ライフスタイルの適合、自分の性格との適合、自身のライフステージとの適合、といった要素を検討すべき、というわけだ(この章の続きでは、実用性のあるツールとして、10のステップが書かれている)。

人生における重大な決断、つまり、「どこに住むべきか」を考える際に、これらの知識を持っておくことは非常に有益なことだと感じた。また、個々人のライフステージによって居住地が変わること、検討事項の考慮は、今後の指針となるだろう。

経済がグローバル化して、ますます重要度を増している「場所(ロケーション)」。

これからますます、地域間に格差が生じていくことになると同時に、どの地域に住むべきかという判断を迫られるようになる現代人。
そんな現代人が人生の節目節目で、参照すべき書だと思う。

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プーア・リチャードの暦 ベンジャミン フランクリン (著) #81

3月 12th, 2009 by blogown

印刷業で成功を収めた後、政界に進出しアメリカ独立に多大な貢献をし、多くのアメリカ人の価値観に影響を与えた(米100ドル紙幣に肖像がある)ベンジャミン・フランクリンが書いた教訓やことわざが書かれた暦が本書。

総じて言えば、「勤勉と倹約」を主とした価値観であり、古風でありながら、なおも輝きを失わない普遍的なもののように感じる。

そこで、本書から、いくつもの印象的な部分を引用してみる。

人生を大切にしたいとおっしゃるか?
ならば時間を無駄に使いなさるな。

時間こそ、人生を形作るのに一番大事なものだからと、プーア・リチャードは言っています。

時間の浪費こそ一番のぜいたく

そして、彼がほかでも言っているように、

時間の遺失物は、間違っても見つかりっこない

時間は大切なのだとじんわりと感じさせる内容です。

井戸枯れて、水の有り難さを知る
お金の有難味を知りたくば、借金をしに行きなさい

お金を借りに行くことは、悲しみを借りに行くこと
着道楽は禍のもと、道楽気分を相談する前に懐と相談しなさい

虚栄心の物欲しさは、物乞いのようにしつこい。いやはるかに図々しい
最初の欲望を抑えるほうが、次々起こる欲望を全部満足させるよりも易しい

富者への道は、もしそれをお望みならばですが、簡単なことなのです。
要するに取り引きのやり方と同じことなのです。
それには二つの言葉が大切です。

勤勉と倹約です。

時間とお金を決して浪費することなく、この二つを最大限に活用するのです。

勤勉と倹約がなければ何事も成就しません。
勤勉と倹約があれば何事も成就します。
正直に働いてお金を得、得たお金は貯金する(必要な支出は別ですが)、そういう人は、必ず裕福になります。

勤勉とは、時間の浪費をしないこと。
倹約とは、お金の浪費をしないこと。

それは、極めて合理的で、充実した人生を送るための秘訣でもあるだろう。

資源はかぎられている。
お金は稼げば増えるかもしれないが、時間は厳然たる事実として有限なのだ。

だからこそ、一番のぜいたくである「時間の浪費」をせず、富者となるためにお金の浪費をせず生活すること。
自分の生き方、人生について考えさせられる一冊。
だからこそ、アメリカ人の価値観に影響を与えることになったのだろう。

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リクルートエージェントNO.1営業ウーマンが教える 社長が欲しい「人財」! 森本 千賀子 (著)#78

2月 27th, 2009 by admin


株式会社リクルートエージェントのリクルーティングプロデューサーで、入社1年目にして営業成績1位、全社MVPを受賞以来、常にトップを走り続けるスーパー営業ウーマンでもある著者、森本 千賀子氏が10000人の転職希望者、4500人の人事担当者、3000人の経営者と出会って見えてきた転職の真実について語ったのが本書。本書は、転職者に向けて書かれたもの。

相手が求めているものを意識するかしないかで転職活動の成否が左右される。

そのため、

経営者が「今、求めている人材像」を理解し、ビジネスに対する意識や取り組み姿勢を見直してみることで、評価は確実に変わってくるはず

というのが本書のテーマ。

本書は、転職者向けに書かれていることから、自分や自分の周り、研究・仕事とは直接関係ないが、世のビジネスパーソンたちは、ダニエル・ピンクが『フリーエージェント社会の到来』で述べ、トム・ピーターズなどが大きく語ってきたような時代の潮流、つまり、知的プロフェッショナルとしての個が重要になってきていることに気付かされる。

本書では、「求められる人材になる18のポイント」が書かれているが、これらを統合すれば、一行に集約することができる。

社内にいながら、自立したプロフェッショナルたれ

つまりは、フリーエージェント、インディペンデント、知的プロフェッショナルとなり、会社に属しながらも自立したビジネスパーソンとなるべきだというわけだ。

「求められる人材になる18のポイント」から、1点ピックアップしてみる。

さらにもう一歩、自分のキャリアをアップする方法があります。
それは、社内のネットワークだけでなく、同業種や異業種など他社の人たちとのネットワークを構築しておくことです。
そのためには、各種セミナーや講演会、勉強会、飲み会など誘われる機会があれば、積極的に参加しておいたほうがいいでしょう。
求められる人材になるポイント⑭ 各種セミナー、講演会、勉強会に参加する

通常、会社に属するビジネスパーソンは、営業職以外は、社外と接する機会がないのに加え、接する必然性がない。
なぜなら、社外と接することは仕事ではないし、社外と接したところで、会社の利益貢献はほとんどできない(とみられている)からだ。

しかし、求められる人材のポイントは、その背景がありながらも、社外とのネットワークを構築すべきだと述べている。
これは、本書には書かれていないが、単純な人間関係から得られる直接的なメリット以外にも、コミュニケーション能力の向上、自分の価値の再認識、客観評価など、種々の方向から、ビジネスパーソンとしての価値が高まるからだろう。

このポイントを見てもわかるように、単純に会社に依存したかたちではなく、自立した知的プロフェッショナルになっていかなければならないのだと気付かされる。

最後に、個人的に興味深かった小見出しがあったので、それについて。

「転職するなら35歳まで」は本当か?

世間では「転職できる年齢は35歳が限界」などと言われています。
多くの場合、年齢が若い人はビジネス経験が浅い分、過去の経験にしばられず、新しいことを柔軟に吸収していきやすいと考えられているからです。そして、柔軟性や変化対応力を備えていれば、「年齢にはこだわらない」という企業も、実は少なくありません。
つまり、「変化対応力がある人」は、多くの企業が求める人材ということです。

なるほど。
柔軟性、変化対応力が重要だと。
35歳を超えたときは、それらのポイントをアピールしなければならないな、と思う。

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年商100億の社長が教える、丸投げチームのつくり方 山地 章夫 (著) #75

2月 23rd, 2009 by admin

約50事業、グループ年商120億円のチームをつくりあげた現役バリバリの経営者で、著者の山地章夫氏が、チームの「売上」「利益」「モチベーション」を上げる、上手な仕事の丸投げ方について語ったのが本書。

個人的に印象的だったのは、「100億企業のつくり方」について書かれた部分。

1つの事業部や会社は100人以内にしましょう。それ以上は分けていきます。
それらのイメージが出来たら、次に新規事業を始めます。
なるべく自分たちの得意な分野と関連ある事業でニーズがあったり市場がありそうな事業、自分たちが外部に発注している事業で利益が多そうな分野でもいいです。

既存の事業をうまく丸投げして、自分はその新規事業の立ち上げを担当します。ただし、その事業を丸投げする相手と一緒に立ち上げて行きます。そしてタイミングを見て丸投げします。これを繰り返していきます。ポイントは、各事業の責任者やトップをその部門だけのプロにしないで、グループ全体に関心、責任を持ってもらうように横断的な会議をつくることです。
管理が複雑になってきたら、グループ全体の数字を管理するスタッフを設けます。兼任でもかまいません。繰り返していくうちに事業ごとのシナジーが発揮されて、加速がつく事業が出てきます。そこに経営資源を重点配分し、これをまた繰り返していきます。すると・・・100億円が見えてきます。
最後に、重要なのは、ある程度大きくなってきたらシステム化していくということです。規模が小さいときからシステム化のイメージを持ちながら進めるのが良いでしょう。

つまり、山地氏の提唱する「100億企業のつくり方」とは、比較的小規模の事業を連続して、いくつも立ち上げていくこと。

丸投げして、余裕をつくり、新規事業の立ち上げを担当する。
将来の丸投げ相手と一緒に立ち上げて、タイミングを見て再度、丸投げ。
連続して、いくつも繰り返して立ち上げていくことで、シナジーが生まれてくる。

このようなやり方で、グループを大きくしていこうというスタンス。

プロフィールにも書かれてある通り、グループを100事業100人の社長をつくろうという「The 100 Vision」の実現に全力投球中とのことで、モットーは「1000億企業より、10億企業を100社」。趣味は新規事業の立ち上げ、とのことなので、これからも、連続していくつもの新規事業を立ち上げていくと思われる。

起業家であれば、とても魅力的な言葉である「新規事業の立ち上げ」。
それを連続して行うために、事業を丸投げする。
これらを繰り返していくことで、大きなグループになっていく。
とても魅力的な方法論が書かれた一冊。

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「エンゼルバンク (モーニングKC)」 三田紀房 (著)

1月 28th, 2009 by admin

概要
エンゼルバンク-ドラゴン桜外伝-. (2008, 12月 21). Wikipedia, . Retrieved 02:30, 1月 28, 2009 from http://ja.wikipedia.org/w/index.php?title=%E3%82%A8%E3%83%B3%E3%82%BC%E3%83%AB%E3%83%90%E3%83%B3%E3%82%AF-%E3%83%89%E3%83%A9%E3%82%B4%E3%83%B3%E6%A1%9C%E5%A4%96%E4%BC%9D-&oldid=23500600.

龍山高校で英語教師をしていた井野真々子は、教師としての成果を挙げながらも教師でいることに飽きてしまい、転職を決意する。そんな時、桜木が主催するビジネスセミナーの会場で、桜木に転職代理人・海老沢康生を紹介される。「人の価値は相場で決まる」「30過ぎたら利子で生きろ」などの海老沢や桜木のアドバイスを受け、教師を続ける事を決意しかかっていた井野だったが、海老沢の勧めで海老沢が所属している転職サポート事業・ライフパートナーに転職する。

井野は海老沢直属下となり、キャリアパートナーとなるが、仕事に関する何の予備知識もないまま、いきなりクライアントの担当を任される。

この本(マンガ)のメインキャラクターのモデルが、僕の知人で、なんと先日、奇遇にも福岡で再会したという驚きのエピソードが、僕にはあったりする一冊。(本当に偶然で、見間違えじゃないかと思いつつも、呼び止めてみると、本人だったという・・・こんなこともあるものなんですねー。)

さて、この本(マンガ)自体は、きちんとしたリサーチに基づいているだけあり、非常に参考になることばかりで学びの多い本(マンガ)。

一番、印象的だったのは、「キャリア20 相場と評価」で中堅メーカーで50代、エンジニアの人が転職しようとするシーン。
転職代理人のヒロイン(井野)が転職者(斉藤)の説明を第三者(特化型の転職代理人)にするときのこと。

彼女はこう言いました。

「斉藤さんは、年齢50歳、品川工業大学を卒業されて機械メーカーに就職。
入社以来、生産設計の技術部に従事し、現在は設計部の課長待遇。
年収は750万。ご家族は奥様と男の子2人。」

それを聞いた相手(特化型の転職代理人)の言葉が強烈。

「結局は、経歴でしか語れないんですよ。

年齢や資格などでしか斉藤さんを判断できない。
相場で必要とされるのは目に見える指標。誰もが共通して使える判断材料。

わかりやすい基準であるから、物事を決定できるんです。」

実に現実的で、客観的な意見でありつつ、鋭い意見。
読んだ人の心を、グサッ、グサッと刺してくる(笑)。

つまりは、相手方と初対面の場合(転職の場合は、面接官)、誰もが共通して使える判断材料として、客観的な評価指標を示さなければならない。そして、それは、人対人の場合は、経歴である、と。

もし、斉藤さんが、本当は、ものすごいことを会社でしていて、最先端テクノロジー関連の論文をたくさん出していた・・・となったら、やはり経歴的に、インパクトは大きいことになる。

ただ、転職者の全員が異常なスキルを持っているということではないわけで・・・。

しかも、「会社にいる間は、ずーっとボケーっとしていました」というような場合、客観評価で経歴を判断されたとしたら、本当に厳しいことになってしまうわけだ。

他者評価について、考えさせられた。

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松風の人―吉田松陰とその門下 津本 陽 (著) #70

1月 12th, 2009 by admin

昭和4年、和歌山県生まれ。東北大学卒業。昭和53年、『深重の海』で第七九回直木賞受賞した著者、津本陽氏が吉田松陰について書いたのが本書。

その他の類書との違いは、主に吉田松陰自身の伝記的な要素の濃さだろう。

一冊、まるごと使って、吉田松陰の人生について書いている。
それは、最初の章が吉田松陰の生誕から始まり、最終章が松陰の斬首の余韻によって締められていることによってもわかる。

文章中には、とても細かい部分がきちんと描かれているが、それは参考文献に「吉田松陰全集」が挙げられていることが要因かと思った。

本書で、最も印象的だったのは、下田踏海によって牢送りになった吉田松陰が小伝馬町牢屋の牢名主※に板で一撃され、詰問されていたときの問答だ。

※牢名主・・・江戸時代、囚人の中から選ばれ、長として牢内の取り締まりなどに当たった者。牢内名主。

吉田松陰は言う。

「私は死を覚悟しており、怖れることはありません」
「なんだと、えらそうなことをぬかしおって。手前はほんとうに死にてえのか」
松陰はたちまち能弁に論じた。

十七、八歳の死が惜しい者は、三十歳の死も惜しかろう。八、九十、百になりてもこれにて惜しからずということはなし。草虫、水虫のように半年の命の生きものもあるが、それが短いというわけでもない。松柏のように数百年の命のものもあるが、天地の悠久たるに比べると一時を生きる蠅のようなものだ。私の念頭に死生はないのだ

つまり、今もって死が惜しい者は、いつになったとしても、死が惜しくはないと思うようにはならないというわけだ。
要は、覚悟ができている者とできていない者の違い。

数百年の命でさえ、天地の悠久たるに比べると、一瞬。

何をすべきで、いかに覚悟を決めるか、それが人生における重要な部分なのだと感じた。

70冊目

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吉田松陰―維新を切り開く思想とその後継者たち 池田諭 (著) #69

1月 12th, 2009 by admin

著者の略歴不明。
明治維新の精神的指導者・理論者として知られる吉田松陰について書かれたのが本書。

本書の内容は、吉田松陰とその周辺人物にスポットライトを当てたかたちで、きれいにまとまっている。

吉田松陰は1830年9月20日に生まれ、1859年11月21日、江戸の伝馬町牢屋敷にて斬刑になるまで、たった30年の人生、30歳までの人生だった。明治維新の精神的指導者との知名度、影響力から見れば、意外なほど短い人生だったといえる。

彼の人生を要約すれば、非常にシンプルにまとめることができる。

1830年・萩にて生まれる
1840年・藩校明倫館の兵学教授となる
1850年・九州へ遊学(西遊日記)
1851年・江戸へ遊学(東遊日記)
1851年・東北へ(東征稿)
1853年・江戸へ(十ヵ年間諸国遊学)
1853年・プチャーチンのロシア軍艦乗り込み失敗
1954年・ペリー船乗り込み失敗
1854年・萩、野山獄へ
1855年・松下村塾にて、多くの人材に指導する
1859年・江戸送致、江戸伝馬町の獄において斬首刑

現代人の目から見れば、そこまで多くの場所を移動していないように見える。しかし、当時の日本人は、藩外への移動が関所によって制限されていたこともあり、実際には、ありえないほどの移動をしているものと思われる。

各所を遊学し、多くの人と出会い、多くの書物を読みふけるうちに、日本の未来に対する思想を磨き、多くの人に伝えていったというわけだ。

松下村塾の門下生で、明治時代まで生きることができ、新政府の大物となった人物には、伊藤博文(初代総理大臣)や山縣有朋(内閣総理大臣2回)らがいる。

吉田松陰の行動力を示す上で、大きなものといえば、1853年(嘉永6年)にプチャーチンのロシア軍艦乗り込み、1854年(安政元年)にペリー船乗り込み失敗、1858年(安政5年)に老中の間部詮勝の暗殺を計画したことがある。

よく考えてみれば、とんでもない行動力である。
ロシア軍艦乗り込み失敗についてみれば、結局、ロシア軍艦がすでにいなくなってしまっていたことから、実行前段階だといえる。

しかし、ペリー船乗り込みは、実際に小舟で船に乗り込み、その後、追い返されてしまったという経緯がある。
当時の日本で、海外渡航は死罪レベルである状況で、この行動。

また、老中・間部詮勝の暗殺については、藩の上層部を含めた周囲に申し出していたそう。
公然と幕府の重要人物の暗殺案をしゃべっているその度胸というか、行動力というか、アグレッシブさは素晴らしいものがある。

それらの行動力も、非常に重要な意味を持っていたのだろう。

たった30年あまりの生涯で、社会に大きな影響を与えた人物の生涯。

参考にしたいものだ。

69冊目

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