貧困のリアル+“35歳”を救え  #134 & #135

3月 16th, 2010 by blogown

僕はラッキーだと思う。
今のところ、生活困窮している状態ではないし、今まで生活保護を受けることも、路上生活をすることもなかったからだ。

ただ、社会の影の部分は、想像以上に暗いのだということ、そして、機会の扉を開き続ける必要があることを痛感した。

まず、若年層の貧困層は、拠りどころとなる場所が存在しないということが極めて問題を深刻にしているのだと感じた。

10代や20代前半の貧困層は、親に頼れない状態の若者たちがほとんど。
児童養護施設の出身者も多く、家族がいない、家族がいるとしても親が生活保護を受けている。
もしくは親もホームレスになっている。
実家で肉体的、精神的な虐待があったりするケースもあるそう。

そして、いったん路上生活者になってしまうと、住所を失ってしまうので、再就職が極端に困難になり、住居なくして仕事には就けない。

自立支援センターが2000年にできたが、入居希望者が定員を大きく上回るため、抽選で当たるまで待つ必要があったりと、「命のくじ引き」が行われているそう。

実際、自立支援センターからアパートを借りて独立できるのは、三割程度といわれており、二割は住み込みの仕事へ、残り五割の多くはまた路上生活者へ逆戻りという。

運よく仕事を見つけられた人も警備や建築関係など日雇いの不安定な仕事に従事していて生活は安定しない。

住み込みであっても結局その職場をクビになったら、また路上生活。

そういうプロセスで、一度転落すると、抜け出せない仕組みになっているというのだ。

本書のオビが端的にこの問題を描き出している。

貧困はアリ地獄だ!!
働けど、働けど低賃金、
足を踏み外せば路上生活者
セーフティネットは穴だらけ!!

その一方で、貧困層ではない層、一般的な若者も、これまでの生活設計ではやっていけない面も出てきている。

たとえば、勤務先の会社の倒産。
必死の職探しで正社員で再就職したとしても、給与カットやリストラが待ち構えている。
不安で子供も持てない。

正社員から派遣社員へ。
一度、非正規社員になってしまうと、その後、正社員としての再就職をしたくても、なかなか抜け出せない。

不安定で、未来に希望が見出せない。
そんな現在の日本を象徴するような2冊。

ポジティブな戦略性、そして、国家レベルでの政策が必要なのだろう。

貧困のリアル 稲葉 剛 (著), 冨樫 匡孝 (著) #134 You can buy this book on amazon.
“35歳”を救え なぜ10年前の35歳より年収が200万円も低いのか NHK「あすの日本」プロジェクト (著), 三菱総合研究所 (著) #135
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独裁者の言い分―トーク・オブ・ザ・デビル リッカルド オリツィオ (著)#132

3月 1st, 2010 by blogown

本書のAmazonでの評価は低い。
たいしたことがない本なのかもしれない。
僕は、そう思っていた。

けれども、実際に読んでみると、実は、本当はとっても素晴らしい本なのだと気付いた。

たしかに、学術的な要素も少ないだろう。
追いつめるまでのストーリーも長い。

しかし、最も重要なのは、この本からは、著者の愛というか、探究心、好奇心が伝わってくるからだ。それは、僕自身が共感する部分でもある。

彼は、あるとき、堕ちた暴君たちのその後を調査してやろう、と決意して、何年もの間、多くの国々をわたり、足取りを追跡し続けた。そうしてできたのが、本書「独裁者の言い分」である。

独裁者、とひと括りに言っても、実際には、さまざまな独裁者がいる。

血と武器があふれる独裁者。
そもそもはピュアな信念から腐敗した独裁者。
私腹を肥やすのに執心している独裁者。

たとえば、シエラ・レオネの独裁者だったヴァレンティン・ストラッサー(バレンタイン・ストラッサー)は、1992年に25歳の時、彼と同じ若い将校のグループと共に軍事クーデターを起こし、シエラレオネの元首になった。しかし、1995年に政権内部でクーデターが起こり彼は権力を追われ、イギリスに逃亡。

そして、ウォーリック大学で法事を勉強し、職員をしていたが、シエラレオネ人学生の抗議を受けて解雇され、2000年の時には失業。その後シエラレオネに帰国し母親と同居。

彼は若く、私腹を肥やすことを知らなかったようで、自前の銀行口座すら持たず、独裁者になったにもかかわらず、経済的に困窮し、シエラレオネで母親と同居。外出するたびに、人々から嫌がらせを受けているそうだ。

その一方で、腐りきった独裁者とその周辺もいる。

ハイチ共和国の第33代大統領・ジャン=クロード・デュヴァリエ。
「ベベ・ドク」(Bebe Doc)または「ベビー・ドック」(Baby Doc)と称される。

独裁者と呼ばれたハイチの大統領フランソワ・デュヴァリエの息子。
世襲して大統領になり、15年間やはり独裁者として君臨。

彼自身の政治は、独裁政治で、腐敗政治。
結局は、1986年に食糧暴動に端を発した国民運動をきっかけに、アンリ・ナンフィ将軍による軍事クーデターによって失脚する。

彼も腐敗しているのだが、最たるは、彼の元妻、ミシェル・デュヴァリエ(現・ミシェル・ベネット)である。
彼女は、ある種、極めて合理的なかたちで、国家から富を搾取した人物である。
ある意味、ビジネスマンであるが、国民からしてみれば、腐りきった女帝である。

彼女が何をしたか。
それは、独裁者が何をするかということを端的に示す事例といえる。
ちょっと見てみよう。

まず、結婚式は首都のポルトープランスの大聖堂にて行い、300万ドル(3億円)の費用をかけた。
次に、直後、ミシェルは自分専用の貯金箱として、ミシェル・B・デュヴァリエ財団を設立。
さらに、デュヴァリエの親族を宮殿より追い出し、自分の親族を入れる。

その後、実の父、エルンストをハイチ・コーヒーの独占輸出権を持つ25人のひとりに据える。
他の24人と違って、免許税まで免除で。

だが、ワシントン・ポストによれば、コーヒーは表向きで、実際のビジネスはコロンビア・コカインの密売らしいが。
ちなみに、ミシェルの兄弟であるフランツは、薬物密売容疑でプエルトリコで逮捕された。

合衆国商務省の資産によれば、80年代のハイチ政府の歳入の63%は、デュヴァリエ一家の息のかかった企業や個人が不正に吸い上げていたという。
追放されたハイチ財務大臣の告白によれば、月に1500万ドル(15億円)の金が予算外支出として計上されていた。

1980年12月にはハイチがIMFより借りた2200万ドル(22億円)のうち、実に2000万ドル(20億円)がミシェルの財団を経由してデュヴァリエの個人口座に入っていたのだ。

つまり、ハイチの路上で、弾圧や圧政に苦しみながら、さらに栄養失調や貧しい生活を強いられながら生きている人々を放置しておきながら、自分たちは贅沢三昧。
さらには、世界がハイチという国家に貸した金(IMFの資金)のほとんどを個人的な懐に入れているのだ。

人の上に立つ者は、高潔でなければならず、思想も崇高なものであるべきだと思う。
それは、つまり、私・自分を殺し、公のために生きるということだ。

なぜなら、権力を持つ者は、その意思しだいで、私腹を肥やすこともできるし、公のために幸福をもたらすこともできるのだからだ。

リーダーたる者、己のエゴのために、動いてはならない。

腐りきった独裁者たちを見ることで、それを学ばねば。

追記:

最後に、独裁者になるプロセスを考えてみる。

大体は、軍部にいた人物でリーダー。
そういう人物がクーデターを起こし、政権を取る。
そうでない場合は、政党に所属して政治活動を経て、なんとか国家元首になる。

政権を取った後は、反対派を排斥、弾圧、処刑。
血の海ができる。
自分を支持する者のみを残し、あとは排除する。

そうすることで、独裁者が形成される。
あとは、その人物がやりたい放題するわけで、そいつが愚かな場合は、民衆は大変な苦労をさせられる一方で、そいつは派手で豪華な生活をこれから謳歌することになる。

また、独裁者を打倒するプロセスとしては、やはりレジスタンス活動。
民衆が意思を統一させることが、一番なのだ。

色々と勉強になる一冊。

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貧困の終焉 ジェフリー サックス (著) + 世界を変えるお金の使い方 山本 良一 (著), Think the Earth Project (著) #103,104

8月 15th, 2009 by blogown

はるか遠くの地では、構造的な苦難に直面し、飢えと病気に苦しみ、汚染された飲料水を飲み、極貧のうちに生涯を終える人々が存在している。

経済発展をハシゴにたとえ、その段を上がることが経済的な幸福につながると考えるなら、世界中でおよそ十億人(全人類の6分の1)が現在、開発のハシゴの一番下の段にさえ、足のかからない人々が存在しているのだ。

本書は、私たちが生きているあいだに世界の貧困をなくすことについて書かれた本だ。

この世界がすべて正しい方向に進んでいるとはかぎらない。
アメリカ政府は4500億ドルを軍事費に回す一方で、世界の貧困対策には150億ドルしか投入していない。

世界の貧困を救うよりも、戦争に対して30倍ものお金を使っているというのが現実なのだ。

たとえば、ケニアのサウリでは、人々は飢えとエイズとマラリアに苦しんでいる。
成人のエイズ罹患率はおよそ30%。ほぼ全家庭が、エイズのせいで親を亡くした子供を引き取っている。しかし、その一方で、エイズ治療である抗レトロウイルス治療は、誰も受けていない。

4分の3の家庭には、マラリア患者がいる。しかし、すべての家庭がひとつ数ドルのマラリア予防の蚊帳を知っていて、使いたいと望んでいるにもかかわらず、実際に使っているのは200人中2人だけ。高すぎて、買うことができないのだ。

病気にかかってしまったとしても、事態は好ましいとはいえない。なぜなら、医師がいないからだ。それは、医師への給料が支払えず、薬も買えないためだ。

児童のほとんどは、授業料、制服代、備品などのお金がないことから、中学に進学できない。そして、ほとんどの児童は、授業のあいだ、空腹ですごすことが多い。

現状の問題を端的に述べよう。

この村や似たような世界中の貧しい村は、救うことができ、開発への道を歩むことができる。

しかし、自力ではできない。なぜなら、彼ら自身が自分たちでそのコストをまかなうには大きすぎる金額だからだ。

ただ、彼らにとっては大きすぎる金額でも、世界にとってはわずかな金額にすぎないのである。

では、このような飢えと病気と死によって彩られた極貧の社会を健康で経済開発の可能な社会へと変えるためにどのようにすればいいのだろうか。それには大きく5つの項目がある。

1.農業への投資
肥料、改良休閑地、緑肥、雨水貯留などの導入で、1ヘクタールあたりの食料収穫量を3倍に増やすことができ、長期的な飢餓の解消につながる。

2.基本的な健康への投資
住民5000人につき、医師と看護師1人ずつのいる診療所をつくり、マラリア予防の蚊帳を無料で配給する。基本的な各種医療サービスの提供。

3.教育への投資
児童の健康状態改善と教育成果、出席率向上のため、小学校の全児童への給食を受けられること。職業訓練の充実によって、近代農法、コンピュータなど、自立に必要な知識を学ぶことができる。

4.電力、輸送、コミュニケーション・サービス
電力によって、安全な水をくみ上げるポンプ、製粉、加工、電灯などが利用できる。加えて、移動手段の充実と外界とのコミュニケーションが可能になることで、社会的な孤立を防ぐことができる。

5.安全な飲料水と衛生設備
汚染された水を飲まずにすみ、女性や子供たちが毎日何時間もかけて水汲みしなくてすむようになる。

たとえば、ケニアのサウリ住民5000人に対して、これらのサービスにかかるコストは、トータルで年間35万ドル。サウリ住民1人あたりにすれば年間70ドル。

これらの項目に対して、世界にとってはわずかなコストを支払うことで、極貧住民たちの自立支援を行うことができるのである。

豊かな社会に生きているために気づかないでいるだけで、はるか遠くの地では極度の貧困にあえぐ人々がいる。

彼らは自分たちの声を伝えていくことができないために、多くの人は彼らの存在を意識することもなく日々をすごしている。

しかし、彼らの存在に気づき、少しでも何かできたとすれば、少しではあるが、よりよい社会になっていくのではないだろうか。

それでは、よりよい社会のために、私たちが何ができるのか、を考えてみよう。

参考になる書籍として、「世界を変えるお金の使い方」がある。

本書は、「お金をどのように使うべきか」について論じた本であり、社会貢献できるお金の使い方について書かれた本である。

世界をよりよい場所にするために、豊かな社会に住む私たちが少しばかりのお金でできることについて、わかりやすく伝えてくれている。

前述のジェフリー・サックスの書いた書籍の流れから、極度の貧困に関係するお金の使い方について、少し書き出してみる。

100円で・予防可能な感染症の中で死亡率が高く、手足に重い後遺症を残すポリオからミャンマーの子ども5人を守ることができます。

500円で・西半球の最貧国、ハイチ共和国の診療所で、不足しているお医者さんをひとり雇うことができます。

1兆2,000億円で・教育の機会を与えられていない世界中の子供たち全員が初等教育を受けられます。

最後の項目は、非常に大きな金額のように感じる。しかし、本書の下部には、こう書かれている。

「1兆2,000億円・世界全体の軍事費、4日分」
2003年の世界での軍事費は合計9,560億ドル
1日あたり26億2,000万ドル。

1週間分の軍事費を教育費に回せば1億人を超える子供たちが十分な基礎教育を受けられることになる。

誰かが言った。

「少年は年をとり、大人になるにつれて、社会の理不尽さについて学ぶ」

たとえ、大人になって、社会の理不尽さを学んだとしても、それに抗うことをやめてはならない。

自分だけの未来ではなく、社会全体の未来を。
世界をよりよい場所とするために。

本書には、具体的にどのようにアクション、行動すればいいのかが案内されているので、本書を参考に、具体的な行動をされてみてはいかがだろうか。

追記:
なぜ、このような格差が生じたのか。
なぜ、経済発展に差が生じたのか、というテーマについて深く知りたいと考えたとき、この問題の背景を知りたいと考えたときに参考になる本としては、「銃・病原菌・鉄(上下)」ジャレド ダイアモンド (著)(草思社刊)がある。
銃・病原菌・鉄〈上巻〉 ジャレド ダイアモンド (著)
銃・病原菌・鉄〈下巻〉 ジャレド ダイアモンド (著)

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世界を変えるお金の使い方 山本 良一 (著), Think the Earth Project (著) #104 You can buy this book on amazon.

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“想い”と“頭脳”で稼ぐ 社会起業・実戦ガイド 「20円」で世界をつなぐ仕事 小暮 真久 (著) #93

5月 1st, 2009 by blogown

NPO法人・TABLE FOR TWO Internationalの理事兼事務局長・小暮真久氏の著書。

TABLE FOR TWOプログラムの仕組み
対象となる定食や食品をご購入いただくと、1食につき20円の寄付金が、TABLE FOR TWOを通じて開発途上国の子どもの学校給食になります。20円というのは、開発途上国の給食1食分の金額です。つまり、先進国で1食とるごとに開発途上国に1食が贈られるという仕組みです。

ぼくが本書から感じ取ったことは、著者である小暮真久氏の「ビジネスマンとしての優秀さ」「社会起業家が必ず向き合わなければならない壁」だ。

「ビジネスマンとしての優秀さ」は、コンサル時代に培われたフレームワーク的な思考と「営業」にそれが垣間見える。

小暮真久氏は、ロジックツリーを用いた、論理思考や問題解決を行い、活動地域、活動内容、展開の方法、考えられる課題などについて、考えられる要素をすべて列挙、整理し、できること、やるべきことを考えていったそうだ。それは、論理的で、理知的、非常にスマートなビジネスマンと見られる要素を兼ね備えているということになる。

加えて、地に足のついた営業。彼は、企業をリストアップし、電話をかけ、担当者を紹介してもらって説明に出向く、という地道な活動をしていったそうだ。それは、現実に提携先を探そうという営業活動であり、起業家としては必須の活動。

要するに、「頭」と「体」を動かすことができる、極めて優秀なビジネスマンだということなのだ。

ただ、小暮真久氏の行っている社会事業は、「内」と「外」の両方向から同時にプレッシャーをかけられるものであり、それらこそが「社会起業家が必ず向き合わなければならない壁」なのだと感じた。

彼は、こう述べている。

社会事業では、「いいことをやっているんだから」という気持ちが強くなり過ぎると、独善や独りよがりに陥る危険があります

自分自身に内在する危険性。

加えて、外部からのプレッシャーも相当なものだ。

たとえば、社会事業に対して、日本ではボランティアという目、無償でやるべき、という考えが散見されることは否定できない。そのため、社会起業家は批判にさらされやすい。なぜなら、社会事業をビジネスとして行うということをしなければならないからだ。

これだけ、高い壁のある社会起業家という立場で、優秀なビジネスマンである著者、小暮真久氏が今後、どのように発展させていくのか、それは興味深い未来。

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クリエイティブ都市論―創造性は居心地のよい場所を求める リチャード・フロリダ (著), 井口 典夫 (翻訳) #82

3月 16th, 2009 by blogown

「クリエイティブ資本論」の著者で、トロント大学ロットマン・スクール・オブ・マネジメント教授の著者、リチャード・フロリダ氏が、クリエイティブ・クラスが主導する経済において、先端的な経済発展はメガ地域に集中し、相似形になっていく世界都市の現実と近未来像を描きつつ、クリエイティブ・クラスにとっての自己実現の重要な手段となっている居住地の選択について、独自の経済分析、性格心理学の知見を使って実践的に解説したのが本書。

以前書いた記事、「メガ地域がグローバル経済を動かす – リチャード・フロリダ」の書籍化と思われる。

福岡のはずれに、おしゃれなカフェがあった。
僕はそのカフェのある山の頂上付近の展望台に行こうと車を走らせていた。

そんなときに、たまたま、そこへ行く道の途中にあったカフェだった。
そこは山奥の見晴らしのいい場所にあって、雑誌にとり上げられていたことを思い出し、偶然もあるものだと感じながらも、カフェに入ってお茶を飲んだ。

コンクリートと鉄骨でモダンな雰囲気を出しているカフェの店内に入ってみると、見晴らしのいい場所で、山の高いところから、福岡の東側が見渡せる位置にあった。

静かな店内で、僕はPCを開いてメールをした。
そうして気付く。

福岡の山奥のカフェでも、都心部のオフィスでも、東京の真ん中でも、アメリカ・ニューヨークでも、同じように仕事ができる。

これが現代の時代を象徴している姿なのだ。
つまりは、ワイヤレス通信、モバイル機器といったテクノロジーの発達と通信インフラの充実によって、僕らのビジネスの姿は、地理的な影響から解き放たれたというわけだ。

ベストセラー「フラット化する世界」の著者、トーマス・フリードマンの主張はこうだ。
世界はフラット(平ら)になった。どこに住んでいようと、グローバル経済に参加できる

しかし、本書の著者、リチャード・フロリダはこう言う。
世界はフラットではない。世界は鋭い凹凸があって『スパイキー』だ」と。

新たな経済単位である「メガ地域」がグローバル経済をかたちづくっているのだと主張する。
リチャード・フロリダの研究チームは、グローバル経済は概ね20から30という少数のメガ地域が担っているとする結論を導いた。

(注:ちなみに、「広域東京圏」「大阪=名古屋」「九州北部」「広域札幌圏」が世界の主要なメガ地域に含まれているとのことだ。うれしいかぎりだ。)

つまり、リチャード・フロリダは、グローバル経済の波とテクノロジーの発展をもってしても、なお、「住む場所」が人生、つまりは、職業、職業的成功、仕事上の人脈、快適な暮らし、伴侶を見つけることといったもの、に影響を与えると主張しているのである。

そして、僕も(おそらくは、あなたも)ぼんやりと気付いている。
いかにテクノロジーが発達して、通信手段が効率的になったとしても、依然として地理的な影響、つまり、住む場所の影響は大きいのだと。

リチャード・フロリダの長年の研究から生まれた本書から学べることは多い。

才能、イノベーション、クリエイティビティのような現代の主要な生産要素は均一に分布していない。
むしろ特定の地域に偏り、集中しているのだ。

現代のクリエイティブ経済における経済成長の真の原動力とは、才能と生産性に満ちた人々の蓄積と集中化である。
彼らが特定の地域に寄り集まって住むことで、新しいアイデアが生まれ、その地域の生産性は増加する。
集積化によって個々の生産力が高まり、今度は生産物と富の増加を生成しつつ、地域そのものの生産性を高めるのだ。

今日、世界の人々の半分以上が都市圏に住んでいる。事実、アメリカでは国内総生産(GDP)の90パーセント以上を大都市圏が担い、さらに、そのうち23パーセントを、たった5つの主要都市が稼ぎ出している。

つまり、現代において重視される才能やイノベーション、クリエイティビティをもたらす人たちは、均一に散らばっているのではなく、特定の地域に集中している、ということなのだ。

集中、集積することで、生産性が高まり、また、それが才能豊かな人たちを惹きつけることになる。
これは、都市の魅力が正のフィードバックループによって自己強化するプロセスが存在するということである。
このことがもたらす帰結は単純である。

二極化だ。

つまり、非常に高い魅力を持った都市とほとんど魅力のない都市に分かれ、魅力ある都市は才能豊かな人を惹きつけ、生産性も高まり、経済成長をもたらす、端的に言えば、成長する大都市となる。

一方で、魅力に欠けた都市は、才能豊かな人が流出してしまうことで、さらに生産性が低くなり、そのことがさらなる魅力の喪失を招き、人口の流出によって過疎化しだす、端的に言えば、衰退する都市となるわけだ。

しかし、一方で、住む場所、つまり、居住地は、経済合理性だけで選ばれるものではない。
人の居住地選択には、感情的な側面もある。

そのことについても、非常に興味深い調査結果と共に、本書で言及されている。

ロンドン大学の経済学者ナッタブド・ポウドサベーは、2007年に興味深い研究を行っている。
その内容はアンケート調査によって、頻繁に会う友人や親戚の金銭的価値を試算するものだった。

彼によると、友人や親戚と毎日欠かさず会えることは10万ドル以上の追加収入に匹敵するという。
たとえば、家族や友人に定期的に会える場所から、はるか遠くへ引っ越したとする。その喪失感は13万3,000ドルに相当するというのだ。

友人や親戚と会えることに対する価値は、非常に高い金銭的価値を持っているのだというわけだ。
続けて、リチャード・フロリダのサンプルデータからの興味深い知見も述べられる。

移動した人々もたいてい、最終的には故郷へ帰る決心をする。家族と一緒に暮らしたいから、年老いた親や子供の面倒を見るため、また生涯の友人と一緒にいたいからなど理由はさまざまだが、故郷が人を惹きつける力は途方もなく大きい。

私は本書の執筆にあたって、およそ200例もの詳細な移動のサンプルを集めたが、そのうちの多くが転居を繰り返した後、人生の後半になって故郷に戻っている

これらを総じて見ると、人の居住地は、純粋に経済合理性だけでは片づけられないように感じる(個人の価値観次第ではあるが)。それでは、いったい、どのようにして自分に適した居住地を把握すればいいのだろうか?

そのことについて言及したのが、第12章「最高の居住地を見つける方法」である。
最高の居住地を見つけるにあたり、検討すべき事項としてリチャード・フロリダは5つ挙げている(引用は抜粋)。

1. 居住地が、仕事や職業上の成功に与える影響に注意を払うべきだ。
2. 親しい知人や親類がそばにいることの有難みと、彼らから離れることによる代償を把握するのも重要だ。
3. 自分のライフスタイルに合う場所を探す時は、自分の気持ちに正直にしたがうべきである。
4. 住みたいと思った候補地が、自分の性格に合うものかどうかも熟考すべきだ。
5. 最後に、候補地が現時点のライフステージに見合うかどうかを確認することも重要である。

つまりは、仕事・職業上の成功(経済合理性)、親しい人間関係を失う代償、ライフスタイルの適合、自分の性格との適合、自身のライフステージとの適合、といった要素を検討すべき、というわけだ(この章の続きでは、実用性のあるツールとして、10のステップが書かれている)。

人生における重大な決断、つまり、「どこに住むべきか」を考える際に、これらの知識を持っておくことは非常に有益なことだと感じた。また、個々人のライフステージによって居住地が変わること、検討事項の考慮は、今後の指針となるだろう。

経済がグローバル化して、ますます重要度を増している「場所(ロケーション)」。

これからますます、地域間に格差が生じていくことになると同時に、どの地域に住むべきかという判断を迫られるようになる現代人。
そんな現代人が人生の節目節目で、参照すべき書だと思う。

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ティッピング・ポイント―いかにして「小さな変化」が「大きな変化」を生み出すか マルコム グラッドウェル (著) #79

3月 5th, 2009 by blogown

『ワシントン・ポスト』紙のビジネス、サイエンス担当記者を経て、雑誌『ニューヨーカー』のスタッフライターとして活躍中の著者、マルコム・グラッドウェルによる著作。世界的な大ベストセラー。

本書のタイトルである「ティッピング・ポイント」とは、あるアイディアや流行もしくは社会的行動が、敷居を越えて一気に流れ出し、野火のように広がる劇的瞬間のこと。

たとえば、それまで知られていなかった本が一躍ベストセラーになる現象などが、どのようなプロセスによって起こっているのかについて、また、犯罪率が著しく増減したりといった謎の多い現象を解明しようとしたのが本書。

本書では、爆発的感染の3原則として、原則1:少数者の法則、原則2:粘りの要素、原則3:背景の力、という3つをあげている。

本書で最も印象的だったのは、やはり「少数者の法則」で書かれている、スタンリー・ミルグラムの実験に代表されるコネクター論の部分だ。

ミルグラムは、ネブラスカ州のオマハに住む160人の住所・氏名を電話帳から入手し、それぞれに手紙を郵送。その手紙には、マサチューセッツ州のボストンで株式仲買人として働き、シャロンに住んでいる人物の名前と住所が入っている。それを受け取った人はその手紙にさらに自分の氏名を記し、株式仲買人のより近くに住んでいる友人や知り合いに転送するように指示されている。

そしてミルグラムは、ほとんどの手紙が株式仲買人に届くまでに五段階か六段階経ていることを発見した。
この実験から、関係の六段階分離という概念が生まれた。

このことは、広く知られており、「Six degrees of separation」として有名だ。

本書で、もうひとつ注目すべき点が書かれており、それは以下のことだ。

わたしたちはほとんどの場合、それほど広範囲で多岐にわたる交友関係を持っているわけではない。ある心理学者のグループによる有名な調査研究によると、マンハッタン北部に建設された公営集合住宅「ダイクマン」の居住者に親しい友人の名前を挙げてもらったところ、その友人の八八%は同じビルに住み、さらにその半数が同じ階に住んでいるという結果が出ている。

つまり、ほとんどの人にとって、社会とは、少数の人(調査・研究によれば、小さな物理的空間を共有している人がほとんど)とのつながりでしかないということになる。短く言えば、範囲は狭く、限られた交友関係によって、その人の社会は構築されているわけだ。

しかし、その一方で、ミルグラムの実験を見るとわかるように、遠くの株式仲買人に手紙を届けるのに6段階程度しか、関係性のつながりを要しないという。なぜか。それは、「コネクター」が、個々の(ある種、孤立しかかっている)社会をつなげているからだ。

シャロンにある株式仲買人の自宅まで届いた二四の手紙のうち、一六の手紙は、ミルグラムがジャコブ氏と呼ぶ織物商の手で本人に渡されていることがわかった。

残りの手紙は株式仲買人の事務所に届いているが、その大半は、ミルグラムがブラウン氏およびジョーンズ氏と呼ぶ二人の人物を通じている。合計すると、株式仲買人の手元に届いた手紙の半分がこれら三人の人物の手で本人に届けられていたのである。

関係の六段階分離説は、すべての人が自分を除くすべての人とちょうど六段階でつながっていることを意味しているのではない。ごく少数の人がわずかな段階でその他すべての人とつながっていることを意味する。残る人々はこの特別な少数者を通じて世界とつながっているのである。

世界を束ねる特殊な才能を持っているこのような人々を、本書では媒介者(コネクター)と呼ぶ。

僕らの世界は、コネクターによってむすびつけられている。
世界の裏側について、思いをはせることのできる一冊。

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誰が世界を変えるのか ソーシャルイノベーションはここから始まる フランシス ウェスリー (著), ブレンダ ツィンマーマン (著), マイケル クイン パットン (著), エリック ヤング (著) #73

2月 10th, 2009 by admin

デュポン・カナダのソーシャルイノベーション・シンクタンクのフランシス・ウェストリー、ヨーク大学シューリック・ビジネススクール教授のブレンダ・ツィンマーマン、フリーの組織開発コンサルタントのマイケル・パットンらが、ソーシャルイノベーション―劇的な社会変革について、犯罪を激滅させた“ボストンの奇跡”、HIV/AIDSとの草の根の闘い、いじめを防ぐ共感教育プログラム、失業・貧困対策、野生動物保護、障害者支援などを事例として、挙げながら分析したのが本書。

内容をわかりやすく伝えるための事例は、「ライブエイド」と呼ばれるイベントだ。

アイルランド出身のロックバンド「ブームタウン・ラッツ」のボーカリスト、ボブ・ゲルドフは、エチオピアの飢餓救済のために6000万ポンド以上のお金を調達した。

彼はイギリス・ロック界のスターたちを集めて、「バンドエイド」を結成し、まずリリースしたシングルを大ヒットさせた。

そして、大西洋をまたいでイギリスとアメリカ両国での演奏を17時間にわたって生中継するという空前の規模のチャリティコンサート、「ライブエイド」を企画したのだ。

社会を動かしていくことは、非常に難しい。
なぜなら、社会を構成する「個人」一人一人の考え、行動はコントロールできないからだ。

にもかかわらず、社会変革という大きなダイナミズムが起き得るのは、なぜか。
そのことについて、いくつものケースをとりあげながら、世界を変える新たな方法について示唆してくれるのが本書。

僕が、本書で最も印象的だったのは、「第6章 冷たい天国」。
「冷たい天国」という表現自体が非常にセンスのある表現だと思う。

この「冷たい天国」とは、ソーシャルイノベーションにとって、これで十分だという到達点、満足できる点が、存在しないことで起きる状況のことだ。

ソーシャルイノベーションの努力が失敗に終わると、大半の人は答えのない堂々めぐりの疑問に悩まされる。

もっと睡眠時間を削ってがんばっていたら、もっと声を大にしていれば、思い切ってやっていれば?もし?もし?もし?

こうして、たくさんの関係者や力を巻きこんでいる活動のはずなのに、その失敗は一個人の失敗になる。

スティーブン・スピルバーグ監督の映画『シンドラーのリスト』の結末に胸を打たれるシーンがある。

シンドラーに命を救われたユダヤ人労働者たちが集まって、解放軍を逃れて出奔しようとしている彼に礼を言うシーンだ。

ユダヤ人一同の感謝を喜んで受けるどころか、シンドラーは動揺し、涙を流しながら、友人に向かってこうささやく。

「この車。なぜ私は車を売らなかったのだろう?
売っていたら、あと10人は救えた。
あと10人・・・
もっとたくさん救えたのに」

目標設定のメリットは、「どこまで行けば、目標を到達することができる」ということが明らかなことだ。

一方で、本当に価値のあるものは、目標や基準が明確でない場合が多い。
たとえば、愛する人と過ごす時間や、子供と遊ぶ時間、友人との会話などは、合理的・具体的に設定することのできる目標は少ない。

この最たる例が、社会変革である。

どこまで行けば、よりよい社会なのか?
どこまですれば、すべての人が幸福である社会なのか?
どこまでするには、どうすればいいのか?
現状で足りない部分は、何なのか?

それは、終わりのないプロセスであり、到達点はないに等しい。

行き着くことのできる先は、天国なのかもしれないが、同時にそこは冷たい場所であるのだろう。

そして、このことは、社会変革だけではない。
人の人生やビジネスも同様だ。

人生も、ビジネスも、十分だと思える点は、なかなか見当たらない。
人は、もっと大きく、もっと良く、もっと満足を求める。
行き着く先は、どこなのだろうか。

僕は、日本という先進国にいて、厚い社会福祉と保護、社会的な豊かさ、高度な社会資本を享受することができている。
世界の別の場所では、同じときに、飢餓に苦しみ、虐殺される人たちもいるのに。

そうだ。
僕らは、すでに冷たい天国の住人なんだ。

でも、たとえ、冷たい天国から逃れられないとしても、もっとよくしたいという気持ちを失ってはならないのだ。

Posted in 社会変革 | 1 Comment »| タグ: ,

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