クリエイティブ都市論―創造性は居心地のよい場所を求める リチャード・フロリダ (著), 井口 典夫 (翻訳) #82

3月 16th, 2009 by blogown

「クリエイティブ資本論」の著者で、トロント大学ロットマン・スクール・オブ・マネジメント教授の著者、リチャード・フロリダ氏が、クリエイティブ・クラスが主導する経済において、先端的な経済発展はメガ地域に集中し、相似形になっていく世界都市の現実と近未来像を描きつつ、クリエイティブ・クラスにとっての自己実現の重要な手段となっている居住地の選択について、独自の経済分析、性格心理学の知見を使って実践的に解説したのが本書。

以前書いた記事、「メガ地域がグローバル経済を動かす – リチャード・フロリダ」の書籍化と思われる。

福岡のはずれに、おしゃれなカフェがあった。
僕はそのカフェのある山の頂上付近の展望台に行こうと車を走らせていた。

そんなときに、たまたま、そこへ行く道の途中にあったカフェだった。
そこは山奥の見晴らしのいい場所にあって、雑誌にとり上げられていたことを思い出し、偶然もあるものだと感じながらも、カフェに入ってお茶を飲んだ。

コンクリートと鉄骨でモダンな雰囲気を出しているカフェの店内に入ってみると、見晴らしのいい場所で、山の高いところから、福岡の東側が見渡せる位置にあった。

静かな店内で、僕はPCを開いてメールをした。
そうして気付く。

福岡の山奥のカフェでも、都心部のオフィスでも、東京の真ん中でも、アメリカ・ニューヨークでも、同じように仕事ができる。

これが現代の時代を象徴している姿なのだ。
つまりは、ワイヤレス通信、モバイル機器といったテクノロジーの発達と通信インフラの充実によって、僕らのビジネスの姿は、地理的な影響から解き放たれたというわけだ。

ベストセラー「フラット化する世界」の著者、トーマス・フリードマンの主張はこうだ。
世界はフラット(平ら)になった。どこに住んでいようと、グローバル経済に参加できる

しかし、本書の著者、リチャード・フロリダはこう言う。
世界はフラットではない。世界は鋭い凹凸があって『スパイキー』だ」と。

新たな経済単位である「メガ地域」がグローバル経済をかたちづくっているのだと主張する。
リチャード・フロリダの研究チームは、グローバル経済は概ね20から30という少数のメガ地域が担っているとする結論を導いた。

(注:ちなみに、「広域東京圏」「大阪=名古屋」「九州北部」「広域札幌圏」が世界の主要なメガ地域に含まれているとのことだ。うれしいかぎりだ。)

つまり、リチャード・フロリダは、グローバル経済の波とテクノロジーの発展をもってしても、なお、「住む場所」が人生、つまりは、職業、職業的成功、仕事上の人脈、快適な暮らし、伴侶を見つけることといったもの、に影響を与えると主張しているのである。

そして、僕も(おそらくは、あなたも)ぼんやりと気付いている。
いかにテクノロジーが発達して、通信手段が効率的になったとしても、依然として地理的な影響、つまり、住む場所の影響は大きいのだと。

リチャード・フロリダの長年の研究から生まれた本書から学べることは多い。

才能、イノベーション、クリエイティビティのような現代の主要な生産要素は均一に分布していない。
むしろ特定の地域に偏り、集中しているのだ。

現代のクリエイティブ経済における経済成長の真の原動力とは、才能と生産性に満ちた人々の蓄積と集中化である。
彼らが特定の地域に寄り集まって住むことで、新しいアイデアが生まれ、その地域の生産性は増加する。
集積化によって個々の生産力が高まり、今度は生産物と富の増加を生成しつつ、地域そのものの生産性を高めるのだ。

今日、世界の人々の半分以上が都市圏に住んでいる。事実、アメリカでは国内総生産(GDP)の90パーセント以上を大都市圏が担い、さらに、そのうち23パーセントを、たった5つの主要都市が稼ぎ出している。

つまり、現代において重視される才能やイノベーション、クリエイティビティをもたらす人たちは、均一に散らばっているのではなく、特定の地域に集中している、ということなのだ。

集中、集積することで、生産性が高まり、また、それが才能豊かな人たちを惹きつけることになる。
これは、都市の魅力が正のフィードバックループによって自己強化するプロセスが存在するということである。
このことがもたらす帰結は単純である。

二極化だ。

つまり、非常に高い魅力を持った都市とほとんど魅力のない都市に分かれ、魅力ある都市は才能豊かな人を惹きつけ、生産性も高まり、経済成長をもたらす、端的に言えば、成長する大都市となる。

一方で、魅力に欠けた都市は、才能豊かな人が流出してしまうことで、さらに生産性が低くなり、そのことがさらなる魅力の喪失を招き、人口の流出によって過疎化しだす、端的に言えば、衰退する都市となるわけだ。

しかし、一方で、住む場所、つまり、居住地は、経済合理性だけで選ばれるものではない。
人の居住地選択には、感情的な側面もある。

そのことについても、非常に興味深い調査結果と共に、本書で言及されている。

ロンドン大学の経済学者ナッタブド・ポウドサベーは、2007年に興味深い研究を行っている。
その内容はアンケート調査によって、頻繁に会う友人や親戚の金銭的価値を試算するものだった。

彼によると、友人や親戚と毎日欠かさず会えることは10万ドル以上の追加収入に匹敵するという。
たとえば、家族や友人に定期的に会える場所から、はるか遠くへ引っ越したとする。その喪失感は13万3,000ドルに相当するというのだ。

友人や親戚と会えることに対する価値は、非常に高い金銭的価値を持っているのだというわけだ。
続けて、リチャード・フロリダのサンプルデータからの興味深い知見も述べられる。

移動した人々もたいてい、最終的には故郷へ帰る決心をする。家族と一緒に暮らしたいから、年老いた親や子供の面倒を見るため、また生涯の友人と一緒にいたいからなど理由はさまざまだが、故郷が人を惹きつける力は途方もなく大きい。

私は本書の執筆にあたって、およそ200例もの詳細な移動のサンプルを集めたが、そのうちの多くが転居を繰り返した後、人生の後半になって故郷に戻っている

これらを総じて見ると、人の居住地は、純粋に経済合理性だけでは片づけられないように感じる(個人の価値観次第ではあるが)。それでは、いったい、どのようにして自分に適した居住地を把握すればいいのだろうか?

そのことについて言及したのが、第12章「最高の居住地を見つける方法」である。
最高の居住地を見つけるにあたり、検討すべき事項としてリチャード・フロリダは5つ挙げている(引用は抜粋)。

1. 居住地が、仕事や職業上の成功に与える影響に注意を払うべきだ。
2. 親しい知人や親類がそばにいることの有難みと、彼らから離れることによる代償を把握するのも重要だ。
3. 自分のライフスタイルに合う場所を探す時は、自分の気持ちに正直にしたがうべきである。
4. 住みたいと思った候補地が、自分の性格に合うものかどうかも熟考すべきだ。
5. 最後に、候補地が現時点のライフステージに見合うかどうかを確認することも重要である。

つまりは、仕事・職業上の成功(経済合理性)、親しい人間関係を失う代償、ライフスタイルの適合、自分の性格との適合、自身のライフステージとの適合、といった要素を検討すべき、というわけだ(この章の続きでは、実用性のあるツールとして、10のステップが書かれている)。

人生における重大な決断、つまり、「どこに住むべきか」を考える際に、これらの知識を持っておくことは非常に有益なことだと感じた。また、個々人のライフステージによって居住地が変わること、検討事項の考慮は、今後の指針となるだろう。

経済がグローバル化して、ますます重要度を増している「場所(ロケーション)」。

これからますます、地域間に格差が生じていくことになると同時に、どの地域に住むべきかという判断を迫られるようになる現代人。
そんな現代人が人生の節目節目で、参照すべき書だと思う。

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ティッピング・ポイント―いかにして「小さな変化」が「大きな変化」を生み出すか マルコム グラッドウェル (著) #79

3月 5th, 2009 by blogown

『ワシントン・ポスト』紙のビジネス、サイエンス担当記者を経て、雑誌『ニューヨーカー』のスタッフライターとして活躍中の著者、マルコム・グラッドウェルによる著作。世界的な大ベストセラー。

本書のタイトルである「ティッピング・ポイント」とは、あるアイディアや流行もしくは社会的行動が、敷居を越えて一気に流れ出し、野火のように広がる劇的瞬間のこと。

たとえば、それまで知られていなかった本が一躍ベストセラーになる現象などが、どのようなプロセスによって起こっているのかについて、また、犯罪率が著しく増減したりといった謎の多い現象を解明しようとしたのが本書。

本書では、爆発的感染の3原則として、原則1:少数者の法則、原則2:粘りの要素、原則3:背景の力、という3つをあげている。

本書で最も印象的だったのは、やはり「少数者の法則」で書かれている、スタンリー・ミルグラムの実験に代表されるコネクター論の部分だ。

ミルグラムは、ネブラスカ州のオマハに住む160人の住所・氏名を電話帳から入手し、それぞれに手紙を郵送。その手紙には、マサチューセッツ州のボストンで株式仲買人として働き、シャロンに住んでいる人物の名前と住所が入っている。それを受け取った人はその手紙にさらに自分の氏名を記し、株式仲買人のより近くに住んでいる友人や知り合いに転送するように指示されている。

そしてミルグラムは、ほとんどの手紙が株式仲買人に届くまでに五段階か六段階経ていることを発見した。
この実験から、関係の六段階分離という概念が生まれた。

このことは、広く知られており、「Six degrees of separation」として有名だ。

本書で、もうひとつ注目すべき点が書かれており、それは以下のことだ。

わたしたちはほとんどの場合、それほど広範囲で多岐にわたる交友関係を持っているわけではない。ある心理学者のグループによる有名な調査研究によると、マンハッタン北部に建設された公営集合住宅「ダイクマン」の居住者に親しい友人の名前を挙げてもらったところ、その友人の八八%は同じビルに住み、さらにその半数が同じ階に住んでいるという結果が出ている。

つまり、ほとんどの人にとって、社会とは、少数の人(調査・研究によれば、小さな物理的空間を共有している人がほとんど)とのつながりでしかないということになる。短く言えば、範囲は狭く、限られた交友関係によって、その人の社会は構築されているわけだ。

しかし、その一方で、ミルグラムの実験を見るとわかるように、遠くの株式仲買人に手紙を届けるのに6段階程度しか、関係性のつながりを要しないという。なぜか。それは、「コネクター」が、個々の(ある種、孤立しかかっている)社会をつなげているからだ。

シャロンにある株式仲買人の自宅まで届いた二四の手紙のうち、一六の手紙は、ミルグラムがジャコブ氏と呼ぶ織物商の手で本人に渡されていることがわかった。

残りの手紙は株式仲買人の事務所に届いているが、その大半は、ミルグラムがブラウン氏およびジョーンズ氏と呼ぶ二人の人物を通じている。合計すると、株式仲買人の手元に届いた手紙の半分がこれら三人の人物の手で本人に届けられていたのである。

関係の六段階分離説は、すべての人が自分を除くすべての人とちょうど六段階でつながっていることを意味しているのではない。ごく少数の人がわずかな段階でその他すべての人とつながっていることを意味する。残る人々はこの特別な少数者を通じて世界とつながっているのである。

世界を束ねる特殊な才能を持っているこのような人々を、本書では媒介者(コネクター)と呼ぶ。

僕らの世界は、コネクターによってむすびつけられている。
世界の裏側について、思いをはせることのできる一冊。

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誰が世界を変えるのか ソーシャルイノベーションはここから始まる フランシス ウェスリー (著), ブレンダ ツィンマーマン (著), マイケル クイン パットン (著), エリック ヤング (著) #73

2月 10th, 2009 by admin

デュポン・カナダのソーシャルイノベーション・シンクタンクのフランシス・ウェストリー、ヨーク大学シューリック・ビジネススクール教授のブレンダ・ツィンマーマン、フリーの組織開発コンサルタントのマイケル・パットンらが、ソーシャルイノベーション―劇的な社会変革について、犯罪を激滅させた“ボストンの奇跡”、HIV/AIDSとの草の根の闘い、いじめを防ぐ共感教育プログラム、失業・貧困対策、野生動物保護、障害者支援などを事例として、挙げながら分析したのが本書。

内容をわかりやすく伝えるための事例は、「ライブエイド」と呼ばれるイベントだ。

アイルランド出身のロックバンド「ブームタウン・ラッツ」のボーカリスト、ボブ・ゲルドフは、エチオピアの飢餓救済のために6000万ポンド以上のお金を調達した。

彼はイギリス・ロック界のスターたちを集めて、「バンドエイド」を結成し、まずリリースしたシングルを大ヒットさせた。

そして、大西洋をまたいでイギリスとアメリカ両国での演奏を17時間にわたって生中継するという空前の規模のチャリティコンサート、「ライブエイド」を企画したのだ。

社会を動かしていくことは、非常に難しい。
なぜなら、社会を構成する「個人」一人一人の考え、行動はコントロールできないからだ。

にもかかわらず、社会変革という大きなダイナミズムが起き得るのは、なぜか。
そのことについて、いくつものケースをとりあげながら、世界を変える新たな方法について示唆してくれるのが本書。

僕が、本書で最も印象的だったのは、「第6章 冷たい天国」。
「冷たい天国」という表現自体が非常にセンスのある表現だと思う。

この「冷たい天国」とは、ソーシャルイノベーションにとって、これで十分だという到達点、満足できる点が、存在しないことで起きる状況のことだ。

ソーシャルイノベーションの努力が失敗に終わると、大半の人は答えのない堂々めぐりの疑問に悩まされる。

もっと睡眠時間を削ってがんばっていたら、もっと声を大にしていれば、思い切ってやっていれば?もし?もし?もし?

こうして、たくさんの関係者や力を巻きこんでいる活動のはずなのに、その失敗は一個人の失敗になる。

スティーブン・スピルバーグ監督の映画『シンドラーのリスト』の結末に胸を打たれるシーンがある。

シンドラーに命を救われたユダヤ人労働者たちが集まって、解放軍を逃れて出奔しようとしている彼に礼を言うシーンだ。

ユダヤ人一同の感謝を喜んで受けるどころか、シンドラーは動揺し、涙を流しながら、友人に向かってこうささやく。

「この車。なぜ私は車を売らなかったのだろう?
売っていたら、あと10人は救えた。
あと10人・・・
もっとたくさん救えたのに」

目標設定のメリットは、「どこまで行けば、目標を到達することができる」ということが明らかなことだ。

一方で、本当に価値のあるものは、目標や基準が明確でない場合が多い。
たとえば、愛する人と過ごす時間や、子供と遊ぶ時間、友人との会話などは、合理的・具体的に設定することのできる目標は少ない。

この最たる例が、社会変革である。

どこまで行けば、よりよい社会なのか?
どこまですれば、すべての人が幸福である社会なのか?
どこまでするには、どうすればいいのか?
現状で足りない部分は、何なのか?

それは、終わりのないプロセスであり、到達点はないに等しい。

行き着くことのできる先は、天国なのかもしれないが、同時にそこは冷たい場所であるのだろう。

そして、このことは、社会変革だけではない。
人の人生やビジネスも同様だ。

人生も、ビジネスも、十分だと思える点は、なかなか見当たらない。
人は、もっと大きく、もっと良く、もっと満足を求める。
行き着く先は、どこなのだろうか。

僕は、日本という先進国にいて、厚い社会福祉と保護、社会的な豊かさ、高度な社会資本を享受することができている。
世界の別の場所では、同じときに、飢餓に苦しみ、虐殺される人たちもいるのに。

そうだ。
僕らは、すでに冷たい天国の住人なんだ。

でも、たとえ、冷たい天国から逃れられないとしても、もっとよくしたいという気持ちを失ってはならないのだ。

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本日、ブログを開設。今後入れるプラグイン

4月 13th, 2008 by admin

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