成功の法則92ヶ条 三木谷 浩史 (著) #153

8月 25th, 2010 by blogown

成功の法則92ヶ条 三木谷 浩史 (著)

僕は、敬愛するウォーレン・バフェットの例に倣って、おニューなビジネスよりも、オールドなビジネスのほうが好きだ。

ドットコムなビジネスよりも、食品、コーヒーショップ、日用品、インフラのような長期的な試練に耐えてきたようなビジネスのほうが好きだ。

なぜ、おニューなドットコム的なビジネスとは距離を置きたいのかというと、そういうビジネスはたしかに興奮や情熱、スピード感にあふれてはいるのだが、あまりにスピードがありすぎて、すぐに陳腐化してしまい、長期的にずっと続けていくようなビジネスではないからだ。

なぜ、そんなにすぐに陳腐化してしまうのかというと、テクノロジーの進展ペースが非常に速く、次々に新しいものが出てくるために、技術的なアドバンテージ、競争優位性が長い時間維持していることが難しいからなのだ。

ヤフー、グーグル、そして、それ以外のいわゆる”ポータルサイト”の死屍累々っぷり。

アメリカだと、AOLができて、タイム・ワーナーと合併して、AOLタイム・ワーナーになって、ITバブル崩壊で合併を解消して、AOLと。

みんなmixiを使うようになったと思ったら、facebookが増えてきて、twitterもみんなしだして・・・

ケータイでは、モバゲーやグリーっすか?

じゃあ、正直10年後に、同じようなサービスで同じような収益を上げている会社って、どんだけあるのか?

そして、これらの大手企業のきらびやかな台頭の影に、どれだけの無数の死体が積み上がっているのか。

若干、気分が盛り上がってきたので論じてみたいが、おニューなドットコム的なビジネスのなかには、現時点で、株主に恩恵を与えていない企業も多い。

たとえば、ドリコムとミクシィ。

ドリコムの株価チャート

ドリコムの株価チャート

ドリコム
2006/02/13始値:3,470,000
2010/8/25:267,300

ミクシィの株価チャート

ミクシィの株価チャート

ミクシィ
2006/09/15始値:1,475,000
2010/8/25:409,000

これは、どうなんだ、と。

株式の市場公開時の価格と現在の株価を比較すると、
ドリコムは92.3%マイナス。
ミクシィは72.3%マイナス。

たしかに、株式投資は自己責任とはいえ、株主にとって、好ましい状況とはいえない現状、経営者および取締役会に何らの責任もないとは思えない。

こういう話は、単純に僕の趣味嗜好であって、おニューなドットコム的ビジネスが大好きだという人は多いし、それを否定するつもりもない。

ただ、僕がビジネスをするのであれば、ポッと現れて、泡のように弾けてしまうような、「5年内にイグジット(まあ、売却とか、譲渡とか、上場とか)する」感じの波乗りビジネスではなく、本当に長期で、顧客に向き合った、ロングなビジネスがしたいと思うだけだ。

まあ、そういうことが僕のなかでバイアスとして存在している。

そういうことが背景にあるために、まあ「おニュー」ではない感じがするけれども、ドットコムーなビジネスをしている「楽天」創業者、三木谷浩史さんの本を手に取ったとき、正直「これもドットコムーな、シリコンバレー的な、ハイテクベンチャー的なニオイのするメッセージが書かれてるんかな?」と思っていた。

でも、実際に読んでみると、率直に言って、すごかった。

三木谷浩史さんは、インターネットビジネスを選んだからこそ、ここまで大きく成長できたのだと思う。

ただ、ここまで成長できたかどうかは別にして、彼はどんなビジネスを選んだとしても、たとえ、地ビール製造ビジネスを選んだとしても、成功させられる男なのだと感じた。

つまり、本書には、ドットコムーな、シリコンバレー的なにおいの話が書かれているのではなく、より普遍的な、あらゆるビジネスに通じる、三木谷流成功論が書かれていたのだった。

ここでは、大きく3点、僕が三木谷浩史さんはスゴイと思ったところについて述べてみる。

スゴイと思ったポイント1:組織的な意思統一と、日々の行動目標の整理をさせている

楽天では月曜日の朝、社員全員で自分たちの職場の掃除をすることになっている。
社員全員あわせても10人に満たなかった時代から、ずっと続けている習慣だ。
新入社員も役員も関係ない。全員で徹底的に掃除する。床に膝をついて、椅子の脚まで磨く。
会社の仕事で自分に無関係なものなどひとつもないのだということを、僕自身も含めて社員全員が確認するためにやっている。

楽天ではそれぞれの部署で、朝会を行っている。朝会では主に、その部署のメンバーが情報を共有するために、それぞれの部署の現状説明が行われる。1日の始まりに、今日の仕事のテーマを具体的に明確にするわけだ。

これは、毎朝、具体的な行動目標を立てていくことだ。
1日の仕事の始めに、今日の行動目標をきちんと整理する。

人間は弱くて、忘れやすい。
昨日、悔し涙を流したのに、今日はけろりとしている。
今日、理想を語っても、明日になれば忘れてしまう。
そういう生き物なのだ。
だから、誓いや目標を立てる。
今の自分の熱い気持ち、心に抱いた高い志を忘れないために。
けれど、その熱い気持ちも、そのままではいつか冷めてしまう。
楽天には、いくつか象徴的な儀式がある。
月曜日の全社をあげての朝会と、社員全員による掃除だ。
これは、楽天市場がスタートした頃、社員がまだ数人しかいなかった時代から続けている。

僕のインターネットベンチャーの先入観は、もっと革新的で、個性を重視していて、自由闊達で、個々人の自由裁量で何でもやらせている感じがしていた。

それは、アメリカのシリコンバレー的なイメージとグーグル社内などで語られるエピソード、そして、インターネットベンチャーで重要になってくる、属人的な高い技術を持つエンジニアたちの存在から感じたことだ。

しかし、楽天ではどうも違うらしい。
組織として、全社をあげて朝会をし、全員で掃除をさせている。

朝会では、現状説明などを含めて、組織全体としての意思統一をはかり、それと同時に、個々人にも日々の行動目標の整理をさせている。

これは、インターネットベンチャーというよりも、成功する組織、ビジネスの方法論だ。
これをスタート当時、社員数人の時代から続けているという。
すごいと思った。

よくある「個々人の自由で、勝手にやらせて、高いパフォーマンスを」という感じではなく、組織戦を最初からやっていたというわけだ。

スゴイと思ったポイント2:洗練されたシミュレーションでビジネスを構築している

直感を数値化し、常に進化させる

たとえば、この駅前に書店をオープンしたら流行りそうだと思う。
それは、あくまで直感だ。

直感は絵の下書きのようなものだ。
ディテールを描き込む作業を中途半端にしてビジネスモデルを構築するから失敗するのだ。

直感という絵の下書きのディテールが、つまり数値化ということになる。
たとえば流行るという直感を、具体的な数字で検証してみる。

駅前を通る人の数、商店街の売り上げ、隣駅の書店の来客数、あるいは利益率、さらには家賃や人件費など様々な数字を集めて、実際に書店を開業したとして、想定される利益を計算するわけだ。

具体的な数値を集めて検証した結果は、たいていの場合、自分が漠然と想像したよりも低いはずだ。けれど、もちろんそこで諦めてはいけない。

細かく描き込んだ絵を、ちょっと遠い所から眺めながら、想像したよりも低い数値を最初の直感に近づける方法を考える。
何が予想と違っているのか、どうすればその数字を上げられるか。そこでまたアイデアが湧く。第二の直感だ。

その第二の直感は、最初のものよりも具体的になっているはずだ。書店の形、つまりビジネスモデルがより鮮明になるわけだ。

そのモデルをふたたび数値化する。集めるべき数字は、また別のものになるだろう。
直感を数値化し、そこからもう一段深い直感を引き出す。その直感を数値化する。この往復を繰り返しながら、より具体的なビジネスモデルを立ち上げていく。

たしかに、ビジネス思考といえば、ビジネス思考ではある。
ただ、これをインターネットビジネスをやっている人が話していることが、スゴイ。

よくあるインターネットベンチャーの論理は「ニーズがあることをする」「ユーザー数がすべて」「ユーザー当たり、X円が見込める」という感じで、なかば妄想的な計画を以って、ビジネスプランとするようだ。「で、どこからお金が生まれるの?」

しかし、三木谷浩史さんは、かなり現実的な人らしい。
具体的な数字で検証して、絵を描きこんでいく。そこからアイデアを使って、さらに具体的なものにする。その往復で、精緻なビジネスモデルを立ち上げていくという。

まったく違うスタイルだし、すごい。

スゴイと思ったポイント3:オリジナリティ一本槍でない考え方

差分+オリジナリティ=勝利

これは、現段階で負けているライバルに、勝つための思考法だ。
差分は、競争相手との差がどれくらいあるか。
たとえば料理店なら、料理の味、サービス、コストパフォーマンス、店の雰囲気などなど。
いろいろな部分で差があるはずだ。その中で、どの要素がライバルに差をつけられているかを調べて、まずその差分を埋める。

つまりどの要素においても、相手に負けている要素を消す。競合相手との差をまず埋めるわけだ。

その上で、自分たちなりのオリジナリティを付け加える。これをやれば、必ずライバルを抜ける。小学生でもわかる足し算だ。けれど、これが案外とできていない。

ライバルと同じことをしていても勝てない、独自色を出そうなどといって、オリジナリティのことばかり考える。だから勝てない。

ライバルが勝っているのは、そのライバルが他にはないオリジナリティを持っているからだ。差分を消す作業は、そのオリジナリティを消す作業でもある。

客の側からすればその時点で、2つの料理店は同等になる。
そこに自分たちのオリジナリティを加えれば、どちらを選ぶかは明白だ。

分解してそれぞれの要素について、相手との差分を解明する。そしてすべての差分を埋めれば、相手との差はゼロになるというわけだ。

相手との差をゼロにしておいて、そこに自分たちのオリジナリティを付け加えれば、自分たちの方がプラスになる。

相手との差を埋めて、はじめて自分たちのオリジナリティを生かせるのだ。

インターネットビジネスは、フロンティアで、誰もやっていないサービス、オリジナリティあふれるサービスをすることがすべてを決するように感じる。新しいビジネス、新しいアイデア、新しいサービス。オリジナリティ一本槍な雰囲気がある。

しかし、三木谷浩史さんは、地道なビジネス論、ビジネスでの戦い方を語る。
競争相手との差がどれくらいあるかを考え、その差分を埋める。
相手に負けている要素を消して、その上で、自分たちのオリジナリティを付け加える、と。

新しいサービス、新しいテクノロジーを使ったビジネス、そういうものがあふれにあふれている業界で、本質的なビジネス戦略を語っているのだ。

僕は、本書を読んで、三木谷浩史さんは、どんなビジネスでも成功させることのできるビジネスマンなのだと感じた。

考えてみれば、それもむべなるかな。

三木谷浩史さんは、日本興業銀行というリアルなエスタブリッシュメントなビジネスの側にいた経歴を持つ。
しかも、楽天は創業初期は、商店街を飛び込み営業していったそうな。

ということは、楽天はインターネットベンチャーというより、インターネットビジネスをしているゴリゴリの事業会社といった表現のほうが適切だろう。

成功の法則92ヶ条 三木谷 浩史 (著) #153

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情報楽園会社 増田 宗昭 (著) #125

1月 26th, 2010 by blogown

「TSUTAYA」を運営するカルチュア・コンビニエンス・クラブ株式会社代表取締役社長・最高経営責任者である、増田宗昭氏が自身の創業記や考えについて述べたのが本書。

本書で印象的だったのは、増田氏のリスク回避の性格(石橋を叩いて渡る性格)についてと、CCC(カルチュア・コンビニエンス・クラブ)のコンセプト、企画会社としての思想である。

普通、人は事を起こすにあたって、月にどれだけの売上げがあがるかを前提にする。しかし、私は万一うまくいかなかったらどうするか、売上げゼロだったらどうするか。まず、そのことを考える。売上げゼロでも家賃や人件費は払わなければならない。借金があれば返済しなければならないし、何よりも自分や家族が食っていかなければならない。新規の事業が売上げゼロでも、それだけの手当てができるかどうか。その手当ての方法をまず先に考えるのである。

まず、増田氏の性格として、リスク回避の性格であることが印象的だった。

通常、ドーンと借金して、多店舗展開。
勢いのある性格のように感じられるが、売上げゼロの場合を想定して、手当てする方法を考えた上で行動しているという、かなりのリスク回避性格。

慎重派であり、リスクを減らして色々な行動をとっていく際には、参考になる思考法であるといえよう。

次に印象的だったのは、企業の思想として、CCCは企画会社であるというものだ。

企画会社とは、このような付加価値のあるものを創造していく集団である。誰もが欲しがる新規事業の企画(ソフト)を考え出し、時代が切り拓く新しい市場に対応して、それを事業化する頭脳である。

私は企画会社としての条件には、次の三つのことが必要だと考えている。
第一は、情報の共有化ということである。(中略)各人のところで情報の組み合わせが行なわれることで、何か新しい発見、新しい企画がアウトプットされるかもしれない。これが知的生産ということだ。(中略)第二の条件は、ノウハウの共有化を推進して、個人のプログラムを強化することである。(中略)さて三番目の条件は、インセンティブ(報奨金)システムの導入、すなわち個人をきちんと評価するということである。

TSUTAYAが前面に出ているために、CCC(カルチュア・コンビニエンス・クラブ)は、どうしてもメディア流通企業のように感じる。

しかし、トップである増田氏の考え方は一貫していて、企画会社である、ということに尽きるという。
つまり、流通・小売のように一見すると見えるのであるが、実際には知識ビジネス、知識集約型のビジネスをしているというわけだ。

たしかに、TSUTAYAをフランチャイズビジネスとして、中央にデータベース+企画を据えた陣容となっている。

このビジネス思想は、一朝一夕ではないだろう。
つまり、創業期からずっと、一貫して、このようなハイレベルなビジネスモデル、ビジネス思想を持っており、そのビジョンを実現させていたということである。
驚嘆する話である。

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