アメリカ新上流階級 ボボズ―ニューリッチたちの優雅な生き方 デイビッド ブルックス (著) #94

5月 10th, 2009 by blogown

BOBOSとは、Bourgeois(ブルジョワ)とBohemians(ボヘミアン)を短くした造語だ。

かつて、ブルジョワジーは既存のエスタブリッシュメントとして、自らがそうである、ということを表象するべく、明白な象徴を用いて、それを実現させてきた。

それは、いわゆる上流階級のそれで、たとえば、アイビーリーグ、WASP、社交界、マナーといった貴族的な要素だ。

しかし、時代が流れ、それらの「表象」が時代遅れになってきたそうだ。
それは、本書にはこう表れている。かつてのエリートが好む言葉はこう。

繊細な、華奢な、お上品な、気品のある、豪華な、贅沢な、エレガントな、素晴らしい、堂々とした、壮大な、法外な

それが時代が流れ、現代のエリートが好む言葉はこうだ。

本物の、自然な、暖かな、ひなびた、シンプルな、正直な、オーガニックな、気楽な、職人的な、ユニークな、分別のある、誠意のある

これらは、結局は、新エリートたちが旧エリートたちに対して、「彼ら」とは違うのだと示すことにより、自分たちの存在を際出させるための行為にすぎない。

それは、相続によって継承されていく、安定的な階層としてのブルジョワジーではなく、自らの能力によって地位を獲得する変動的な階層、メリトクラシーに基づいて獲得しえた結果としてのブルジョワジーであることの表示であるとも見ることができる。

要は、みんな認められたいんだ。

ボボズが、最高級のトレッキングシューズを履いて、ダブルトール・ラテを買って、高級SUVに乗り込み、オーガニック食品を買いに走らせていくのは、結局は自分がエリートなんだと認められたいからに他ならない。

この本は、ボボズがどのような存在なのか、ボボズの消費行動、ライフスタイル、精神面、社会における存在など、さまざまな観点から分析している。

人は社会的な生き物だ。
みんな、他者からの承認に飢えている。
たとえ、時代が変わっても、表象が異なっても、エリート層が新しくなったとしても。

アメリカ新上流階級 ボボズ―ニューリッチたちの優雅な生き方 デイビッド ブルックス (著) #94 You can buy this book on amazon.

※1:ワスプ(WASP)は、ホワイト・アングロサクソン・プロテスタント
※2:メリトクラシー・メリットクラシー〈meritocracy〉
業績主義・能力主義。能力や努力の結果としての業績(メリット)を基準にして、社会的地位が決定する考え方。またそうした考え方が基盤となる社会。近代社会の構成原理の一つであり、現代の日本にも当てはまる。イギリスの社会学者ヤングによる造語。対立する概念として、アリストクラシー(貴族主義)がある。

http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%E1%A5%EA%A5%C8%A5%AF%A5%E9%A5%B7%A1%BC
http://en.wikipedia.org/wiki/Meritocracy

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誰が世界を変えるのか ソーシャルイノベーションはここから始まる フランシス ウェスリー (著), ブレンダ ツィンマーマン (著), マイケル クイン パットン (著), エリック ヤング (著) #73

2月 10th, 2009 by admin

デュポン・カナダのソーシャルイノベーション・シンクタンクのフランシス・ウェストリー、ヨーク大学シューリック・ビジネススクール教授のブレンダ・ツィンマーマン、フリーの組織開発コンサルタントのマイケル・パットンらが、ソーシャルイノベーション―劇的な社会変革について、犯罪を激滅させた“ボストンの奇跡”、HIV/AIDSとの草の根の闘い、いじめを防ぐ共感教育プログラム、失業・貧困対策、野生動物保護、障害者支援などを事例として、挙げながら分析したのが本書。

内容をわかりやすく伝えるための事例は、「ライブエイド」と呼ばれるイベントだ。

アイルランド出身のロックバンド「ブームタウン・ラッツ」のボーカリスト、ボブ・ゲルドフは、エチオピアの飢餓救済のために6000万ポンド以上のお金を調達した。

彼はイギリス・ロック界のスターたちを集めて、「バンドエイド」を結成し、まずリリースしたシングルを大ヒットさせた。

そして、大西洋をまたいでイギリスとアメリカ両国での演奏を17時間にわたって生中継するという空前の規模のチャリティコンサート、「ライブエイド」を企画したのだ。

社会を動かしていくことは、非常に難しい。
なぜなら、社会を構成する「個人」一人一人の考え、行動はコントロールできないからだ。

にもかかわらず、社会変革という大きなダイナミズムが起き得るのは、なぜか。
そのことについて、いくつものケースをとりあげながら、世界を変える新たな方法について示唆してくれるのが本書。

僕が、本書で最も印象的だったのは、「第6章 冷たい天国」。
「冷たい天国」という表現自体が非常にセンスのある表現だと思う。

この「冷たい天国」とは、ソーシャルイノベーションにとって、これで十分だという到達点、満足できる点が、存在しないことで起きる状況のことだ。

ソーシャルイノベーションの努力が失敗に終わると、大半の人は答えのない堂々めぐりの疑問に悩まされる。

もっと睡眠時間を削ってがんばっていたら、もっと声を大にしていれば、思い切ってやっていれば?もし?もし?もし?

こうして、たくさんの関係者や力を巻きこんでいる活動のはずなのに、その失敗は一個人の失敗になる。

スティーブン・スピルバーグ監督の映画『シンドラーのリスト』の結末に胸を打たれるシーンがある。

シンドラーに命を救われたユダヤ人労働者たちが集まって、解放軍を逃れて出奔しようとしている彼に礼を言うシーンだ。

ユダヤ人一同の感謝を喜んで受けるどころか、シンドラーは動揺し、涙を流しながら、友人に向かってこうささやく。

「この車。なぜ私は車を売らなかったのだろう?
売っていたら、あと10人は救えた。
あと10人・・・
もっとたくさん救えたのに」

目標設定のメリットは、「どこまで行けば、目標を到達することができる」ということが明らかなことだ。

一方で、本当に価値のあるものは、目標や基準が明確でない場合が多い。
たとえば、愛する人と過ごす時間や、子供と遊ぶ時間、友人との会話などは、合理的・具体的に設定することのできる目標は少ない。

この最たる例が、社会変革である。

どこまで行けば、よりよい社会なのか?
どこまですれば、すべての人が幸福である社会なのか?
どこまでするには、どうすればいいのか?
現状で足りない部分は、何なのか?

それは、終わりのないプロセスであり、到達点はないに等しい。

行き着くことのできる先は、天国なのかもしれないが、同時にそこは冷たい場所であるのだろう。

そして、このことは、社会変革だけではない。
人の人生やビジネスも同様だ。

人生も、ビジネスも、十分だと思える点は、なかなか見当たらない。
人は、もっと大きく、もっと良く、もっと満足を求める。
行き着く先は、どこなのだろうか。

僕は、日本という先進国にいて、厚い社会福祉と保護、社会的な豊かさ、高度な社会資本を享受することができている。
世界の別の場所では、同じときに、飢餓に苦しみ、虐殺される人たちもいるのに。

そうだ。
僕らは、すでに冷たい天国の住人なんだ。

でも、たとえ、冷たい天国から逃れられないとしても、もっとよくしたいという気持ちを失ってはならないのだ。

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吉田松陰―維新を切り開く思想とその後継者たち 池田諭 (著) #69

1月 12th, 2009 by admin

著者の略歴不明。
明治維新の精神的指導者・理論者として知られる吉田松陰について書かれたのが本書。

本書の内容は、吉田松陰とその周辺人物にスポットライトを当てたかたちで、きれいにまとまっている。

吉田松陰は1830年9月20日に生まれ、1859年11月21日、江戸の伝馬町牢屋敷にて斬刑になるまで、たった30年の人生、30歳までの人生だった。明治維新の精神的指導者との知名度、影響力から見れば、意外なほど短い人生だったといえる。

彼の人生を要約すれば、非常にシンプルにまとめることができる。

1830年・萩にて生まれる
1840年・藩校明倫館の兵学教授となる
1850年・九州へ遊学(西遊日記)
1851年・江戸へ遊学(東遊日記)
1851年・東北へ(東征稿)
1853年・江戸へ(十ヵ年間諸国遊学)
1853年・プチャーチンのロシア軍艦乗り込み失敗
1954年・ペリー船乗り込み失敗
1854年・萩、野山獄へ
1855年・松下村塾にて、多くの人材に指導する
1859年・江戸送致、江戸伝馬町の獄において斬首刑

現代人の目から見れば、そこまで多くの場所を移動していないように見える。しかし、当時の日本人は、藩外への移動が関所によって制限されていたこともあり、実際には、ありえないほどの移動をしているものと思われる。

各所を遊学し、多くの人と出会い、多くの書物を読みふけるうちに、日本の未来に対する思想を磨き、多くの人に伝えていったというわけだ。

松下村塾の門下生で、明治時代まで生きることができ、新政府の大物となった人物には、伊藤博文(初代総理大臣)や山縣有朋(内閣総理大臣2回)らがいる。

吉田松陰の行動力を示す上で、大きなものといえば、1853年(嘉永6年)にプチャーチンのロシア軍艦乗り込み、1854年(安政元年)にペリー船乗り込み失敗、1858年(安政5年)に老中の間部詮勝の暗殺を計画したことがある。

よく考えてみれば、とんでもない行動力である。
ロシア軍艦乗り込み失敗についてみれば、結局、ロシア軍艦がすでにいなくなってしまっていたことから、実行前段階だといえる。

しかし、ペリー船乗り込みは、実際に小舟で船に乗り込み、その後、追い返されてしまったという経緯がある。
当時の日本で、海外渡航は死罪レベルである状況で、この行動。

また、老中・間部詮勝の暗殺については、藩の上層部を含めた周囲に申し出していたそう。
公然と幕府の重要人物の暗殺案をしゃべっているその度胸というか、行動力というか、アグレッシブさは素晴らしいものがある。

それらの行動力も、非常に重要な意味を持っていたのだろう。

たった30年あまりの生涯で、社会に大きな影響を与えた人物の生涯。

参考にしたいものだ。

69冊目

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「婚活」時代 山田 昌弘 (著), 白河 桃子 (著) #68

1月 9th, 2009 by admin

「パラサイト・シングル」「格差社会」で知られる、家族研究を専門としている著者、山田昌弘氏と結婚や恋愛を中心に取材しているジャーナリストである著者、白河桃子氏が共著したのが本書。

目次:amazon.co.jp

1 「婚活」時代の到来
2 結婚したくてもできない!
3 「婚活」前時代vs「婚活」時代
4 彼と彼女が結婚できない理由
5 結婚したいのにできない社会的要因
6 現代日本、「結婚」と「婚活」の実態
7 四十歳からが結婚適齢期?三十五歳からの婚活
8 成功する婚活

タイトルの「婚活」とは、「結婚活動」の略で、よりよい結婚を目指して、合コンや見合い、自分磨きなど、積極的な行動のことを指す。

なぜ、婚活が必要になったのかというと、男女交際に関する規制緩和が起きたことで、自動的に結婚できない時代が到来したため。

本書を読んで、僕が一番興味をひかれたのが、「結婚できない」ロジックだ。

女性パターンA・従来型の結婚の場合
従来型の結婚というのは、男性に経済的に依存した、男性がメインで稼いでほしいということ

1.この場合、女性は、結婚相手に今の自分の二倍の年収を望む
2.しかし、該当者(候補者)は、ほとんどいない(該当者の多くは、既婚者)
3.その結果、条件を満たす男性との出会いはほぼない
4.ゆえに「結婚できない」

女性パターンB・スーパーキャリアウーマンの場合

1.この場合も、自分より仕事のできる男性を望む(要は、仕事と年収)
2.加えて、一方の希少な該当者は、「自分をバックアップしてくれる旧来型の女性を好む」
3.その結果、条件を満たす男性との出会いはほぼない
4.ゆえに「結婚できない」

このようなロジックによって、結婚できないという現象が起こる、と。
環境的な要因を除いた、それらのロジックを引き起こす個々の要因を要約すれば、こうなる。

男性の結婚できない要因は、1.経済力、2.コミュニケーション能力
女性の結婚できない要因は、1.結婚相手に対する要求水準の高さ(つまりは、上記に書いたもの)、2.運

これらの個々の要因やその他の環境的・社会的要因を含めて考えると、最終的には、「豊かさ」がもたらしたものだと感じる。豊かさ、そして、多様性は、社会生活に対しては、ポジティブな影響を与えたかもしれないが、一方で、「結婚」という現象に対しては、ネガティブな影響を与えたと思う。

たとえば、多様性の象徴として見ることのできるスーパーキャリアウーマンは、結婚しなくても生きていくことができてしまう。

数世代前は、女性参政権でさえ問題となり、女性運動が盛んであったことを考えると、その当時には、想像もつかなかった生き方である。しかし、急速な発展は、その生き方を可能にし、「結婚しない」という選択肢を可能にしてしまっている。

これらのストーリーとロジックをたどっていると、現代日本の一面をかいま見ることができる。
日本という社会が変化をしていくにつれて、個々人の生活スタイル、ひいては「結婚」問題にもつながっていくというわけだ。

なんだかんだ言って、僕自身も「婚活」時代の真っ只中にいるわけで、しかも独身なので、ものすごく共感の持てる問題だった。

「婚活」時代。
仕事だけでも、大変なのに、もっと大変な活動が増えた時代になったものだ。
時間がより重要視される資源となることだろう。

68冊目

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